『淫魔猟兵対美少女戦士』

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本SS(短編小説)は、2005年から2015年ごろまでWisper様に掲載されていた作品です。

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高層ビルの最上階の役員室。

ガラス張りの向こうに、美しく瞬く地上の灯火たち。

女は窓際にたたずんで、眼下に広がる街の夜景を眺めていた。

ドアをノックする音。

「誰?」

「カーナです。」

「入って。」

ドアが開く。

「失礼します。・・珍しくお1人ですのね。」

カーナはミルバのそばまでやってきて、一緒に夜景を見る。

「あの人なら”やきとーり”を食べにいったわよ。スーツ姿の女に囲まれてると窮屈だって。1人で外に行ったわ。」

「ヤキトリ・・・あれですか・・黒い液のかかった肉・・。」

「旦那に用事なの?」

「いえ、ミルバ様に申し上げたいことが。」

「なんなの。」

「実は、淫魔猟兵の試験データ、収集が滞っておりまして・・」

「考えてみなさい、若い2人ですもの、それどころじゃないでしょう?」

「ですが、もう1ヶ月ですよ。早くデータを揃えていただかないと、次のプロジェクトが進まないのです。」

「2回も実戦テストしたじゃない。足りないの?」

「はい。淫魔猟兵の耐久力、防御力の実戦データが不足しています。」

「ミナを後ろから蹴っ飛ばせば分かることよ。」

「・・・こちらが吹き飛ばされてしまいます。」

「防御力なら、攻撃を受けないとテストできないわね。」

「そうです。それから、淫魔猟兵には緊急時に発動する機能も備わっています。それも試験したいのです。」

「色々実験してみたいわけね。」

「ええ。そこでご相談に参ったのです。」



昼下がり。

カーテンを締め切った保健室に僕はいた。

カーテンの外側には11月の青空と校庭が広がっている。

一方で、その内側は薄暗く、淫靡な世界。

午後の授業はすで始まっている。

静まりかえった校舎。

服がこすれ合う音。

白いシャツ。

紺色のブルマ。

ミーナのからだからは、男を誘う甘酸っぱい果実の香りが漂っている。

彼女はブルマを履いたままで、ペニスを偽の膣にのみ込んでいた。

花びらを露出するためにずらしたブルマの布地が、僕の股間をさする。

ブルマも膣も気持ちよくて、僕はただ淫魔のからだに夢中になる。

膣の中でペニスを前後させると、麻薬的な心地よさが精神を癒していく。

乾ききった大地に恵みの雨が降るように、僕の渇きを潤す。

ねっとりと優しい、暖かいぬくもりが僕のペニスを根元まで包み込む。

彼女と深いキスを交わし愛の言葉を囁く。

と、『癒し』が『搾り』へと変わる。

彼女がその本性を現したのだ。

挿入感に浸る間もなく、膣壁にびっしりと生えたひだひだが責めてくる。

締め上げ、こすり、射精を促してくる。

この快楽はくせになる。

しかも相手は、夢の世界から飛び出てきたような可愛い子だ。

夢の中で中だし。

起きて朝の中だし。

10時の中だし。

お昼休みの中だし。

おやつの中だし。

放課後の中だし。

夜の中だし。

また、夢の中で中だし。

これがサキュバスクオリティ。

今の僕のライフスタイル。

こんな気持ちいいこと、もうやめられない。

ミーナと会ってから1ヶ月。

淫魔のからだを抱いてしまったことが、どれほど重大なことか分かった。

もう、彼女のからだなしでは生きていけないのだ。

たくさん射精すればなんとなく満たされる。

しかしその満足は一時的なものなのだ。

彼女の太ももをみたり、軽くキスしたりするだけで、すぐからだが欲しくなる。

入れたくなるのだ。

入れれば、射精したくなる。

彼女が上のときは、僕が両手で彼女のお尻や腰を押さえて、一番奥で射精する。

彼女が下のときは、彼女が僕の体を足や腕でくるんで、一番奥で射精させられる。

射精すればするほど、好きになる。

好きになれば抱きたくなる。

抱けば、中で射精したくなる。

支配という言葉がぴったりだ。

僕の心と体は支配されてしまったのだ。

淫魔は人間を性交に誘う。

精を採集するために。

しかし、それだけではないのだ。

こうやって何度も肌を重ねることで、人間の精神と肉体を支配し、従順なペットに調教する目的もあるのだ。

気づくのが遅すぎたようだ。

支配されてしまった。

僕は、昨晩ミーナにこのことを聞いてみた。

彼女はあっさり認めた。

「いいでしょ?調教したり支配するってことは、それだけ気に入ってるからだよ?」

ミーナはそう言った。

リクエストどおりのコスチュームで、僕を誘う。

これも調教なんだ、僕をより従順にするための。

エッチするシチュエーションも、僕のリクエストどおり。

この子の何もかもが、僕の思い通りになるような錯覚を覚える。

違う、逆なんだ・・

僕の何もかもを、この子の思い通りにされてるんだ!

でも・・でも・・

ぐちゅっ、ねちゃっ。

好きなんだ、この子が・・・

死ぬほど、狂おしいほど、好きなんだ!!

僕は彼女を強く抱く。

鼻の中に香水を振り掛けたような濃い匂い。

僕だけの女の子!

体操服の半そでシャツ。

僕は彼女の腕を、そしてシャツごしに肩、首筋と愛撫した。

吸い付くように僕の腕になじむ、暖かいミーナの肌。

キレイな髪の毛。

愛しい。

すべてが。

ゆっくり、優しく、ミーナは腰を振り始めた。

あお向けになったミーナの上にしっかりと覆い被さって、ねちっこくディープキス。

舌と舌を絡ませたまま、僕は体操服のシャツの上からおっぱいをもむ。

くちゅ、ぐちゅっ。

まだ数えるほどしか彼女の腰は往復していない。

にもかかわらず、僕はたまらない気持ちになってしまった。

自分からラストスパートをかける。

パンパン、パンパン!

ミーナはキスをやめて、僕に微笑みかける。

今日のシチュエーションは、イメクラで働く同級生を妊娠させてしまうというもの。

制服好きな男子高校生が、お金を払って中だししている間に、女の子を妊娠させてしまうのだ。

誰だ!

(´,_ゝ`)プッとかいうヤツは!

「あん、お客さん♪もうイきたいの?わかった、童貞でしょ。」

ミーナの言葉は僕の心のひきがねをひく。

パンパンパン、パンパンパン!

『お客さん』なんて呼んでもらって、僕はすごく興奮する!

意外と、風俗にハマルたちかもしれない。

「イかせて!イきたいですぅ〜!」

気持ちよくて、射精したい!

はやくイきたい!!

射精のため、ひたすら腰を振りつづける。

彼女の膣も僕を早くイカセようとする。

さらに締め付け、強くしごいてくる。

「気持ちいいでしょお。君は今、あたしのマ○コ使ってオナニーしてるのよ。」

なにも考えず、相手のからだを使ってするオナニー。

そう・・これはセックスじゃないんだ。

ただ単に、相手の性器で自分をイかせてるだけなんだ!

相手をイかせることのできないセックス。

こんな一方的な行為は、セックスじゃない。

オナニーと同じなんだ。

「はぁ・・ううう・・」

僕の漏らす声を聞いて、ミーナは太ももで僕の胴を左右からはさみ、両手を僕の肩にかけた。

「生で中だしは、追加料金頂きまーす。」

きゅっと一層膣が締まり、竿もカリ首も、ぷりぷりした『愛情量産用』としか思えない膣壁で最後の止めを刺される。

亀頭が一段と気持ちよくなって、真っ白な幸福感がその先端から吐き出される。

「あうっ!?」

偽の子宮壁に、白い粘液が勢いよくかかって飛び散る。

どぷっ、どぴゅーーーっ!!

一瞬だけ、僕のすべてが満たされる。

「あはっ♪追加料金一万円はいりまーす♪」

「はーはー、ぜーぜー・・」

「お客さん、一休みするぅ?それともぉ、おうちに帰ってあたしと一緒にお布団に入る?」

「逢瀬さん、僕と、僕と結婚して・・君のためなら何でもするよ、お願いだから、僕と結婚して・・」

「けっこん?うふふふ、エッチするたびにサービス料いただくわよ♪しかも、愛情込めて犯してあげるから、特別料金もいただきまーす。」

「借金してでも払うから・・お願いだよ、僕と一緒に暮らして・・」

「ふふふん、ねえ、どうする?エッチ、続ける?やめる?」

「ごめん、このままでもっとイきたいよ。」

「分かったよ。お財布のお金切れるまでイかせてあげる♪」

「お金切れてもイかせて・・君のこと、本当に好きなんだ・・!」

「よく言うわ。たいしてお金ももってないくせに。」

ペニスは、射精する前よりも腫れ上がっている!

僕は愛を注ぎ込みたくて、また、コキコキ腰を振り始める。

彼女を少しでも気持ちよくするために、ペニスを膣にすりつけるように前後させた。

だが・・!

「ああっ。気持ちいいよぉ!」

かえって僕は自分の体を高めてしまう。

カリ首の裏まで、ひだひだにしごかれてる〜!

やめられなくなった!

自爆目指してひたすら前後に腰を振りつづける!

あああああっ、また、射精しちゃう・・

だめ・・!!

からだ、いいよぉ・・!!

逢瀬さん・・

「うふん、まだまだねぇ。もっと上手なら、安くしてあげてもいいのに。」

彼女は、僕の射精を促すため、甘く腰をゆすってくる。

「この調子じゃ、しばらくは精液とお金を搾られるだけの奴隷ね。」

「くくっ。はぁっ、それでもいいよぉ・・!!」

逢瀬さんは余裕の表情で、腰で円を描く。

なんていやらしい腰の動きなんだろう。

まるで逢瀬さんの体が、『あたしを妊娠させて』と精子を求めてるみたいだ。

僕は逢瀬さんに肩にすがって、激しく腰を振りまくる!

イかせる腰の動きと、イきたい腰の動きが溶け合って、僕は再び絶頂を迎えてしまう。

これじゃ、口リに肉棒!!

いや、鬼に肉棒だっ!!

ホント、僕、今、理性が飛んでる!!

逢瀬さんを妊娠させたい!!

「う、くぅん、だめだ、イクっ!!」

「あはん、もう二発目なの?」

「ごめん、またおなかに出しちゃう・・!」

「もう何も考えないでいいよ♪いっぱい愛情あたしに注いで♪」

「お、逢瀬さん!愛してるよ!!あ、ああ、ああああ!!」

本能の命じるまま、僕は一際肉棒を深く差し込むと、一気に精を放った。

どぴゅーっ!!どっくんどっくん!どくっ!!びゅっ、ぴゅっ。

熱くて白い濁流が、新たな命を宿す肉の洞窟へ流れ込んでゆく。

「・・うわ、カタマリみたいなの子宮にかかったぞ?」

「ああっ・・はぁっ・・」

「好き?あたしのこと。」

「君のためなら、すべて捧げるよ・・」

「あのさ、君のために特別コース用意してあげてもいいよ?」

「特別コース・・」

「1ヶ月定額。中で出し放題。料金は銀行口座もしくはキャッシュカードからのお支払いになります。詳しくはこちらをクリック。」

「えっ・・そんな、本当に一文なしになっちゃうよ。」

「なっても大丈夫。あたしが、住む場所もご飯も提供してあげるから。」

「要するに、同棲するってこと!?」

「でもぉ料金の滞納が続くときは、契約を破棄させていただきまーす。」

「そんな、1ヶ月もやり放題で急に捨てられたら、気が狂っちゃうよ。」

「あたしのこと思い出して毎日抜けばいいでしょ。しこしこ、しこしこ。あたしとエッチしたこと思い出して、毎日オナニー。うふふ、いいきみだわ。」

「君のこと、こんなに好きなのに・・そんなこというなんて・・」

「何が好きだよ、ただのセックスラブでしょ?あたしが好きなんじゃない。あたしのからだが好きなだけ。」

「君が好きなんだよぉ。」

なぜか、胸がきゅっと苦しくなった。

彼女の言葉は、演技とは思えなかった。

「そんなにあたしが好きなら、あたしをイかせてごらんよ?」

僕はまた、ゆっくり腰を振り始める。

ペニスはさっきからずっと怒張しっぱなし。

「はぁふ、はぁふぅ、逢瀬さぁん、愛してるよぉ。」

「ふふふふっ、あたしも今だけ、愛してあげるね♪」

逢瀬さんの腰も動く。

最初から激しく前後に。

「ほおら、おねえさんのおなかにいっぱい出すのよ♪」

「逢瀬さん、逢瀬さんっ、愛してる、愛してる、愛してるーっ・・」

パンパン!パンパン!!

僕たちは激しく腰を打ち合わせる!

パンパン!パンっ!!

ぐぐぐっと心地よいエッチな気持ちがこみ上げてきた。

イきたい。

中にいっぱいだしたーい♪

「逢瀬さんっ、ごめん、逢瀬さんを妊娠させたいよっ!!」

「あはん♪赤ちゃんの種注いで、おなかにいっぱい出して!」

パンパンパン!

「あ、もう、だめ、いくよぉ!」

「いいわよ、出して♪美奈のエッチな体で、白い液出して♪」

ふわっと全身が軽くなったかと思うと、二つの玉袋の間を、白い快楽が走りぬける。

それは、真っ赤に灼熱した欲望の権化の先端から、一気に吹き出た。

びゅくっ!!びゅっ!!びゅうううっ!!

「ああん、もー。また子宮に出したね♪普通、子宮に出すのは遠慮しない?」

逢瀬さんは拘束を解いて、僕を自由にした。

「からだが勝手に・・ごめん。」

「まあいいけど。君はこれからおとくいさんになる人だからね。お金さえ払ってもらえれば、許してあげる。代金は税込みで3万5千円になります。これで終わりにする?それとももう一発出して、身も心もすっきりする?」

彼女の膣内で、僕のペニスはなおボッキンキンに立っていた。

「もっともっとしたいよぉ。」

「そんなにお金ないでしょ?」

「うん。」

「おねーさんが手でサービスしてあげる。いっぺん、おちん○ん、中から抜いてよ。」

「ああっ、やだ、このまま中で・・お金、後で払うから。」

「あたしのからだ、そんなに好きになったの?しょうがないわね。いいわ、一回だけ射精していいわよ。君が満足できるように遊んであげるから。」

ああ、僕は何をしてるんだろう!

僕は本当に、この子の性奴隷になってる!!

僕はまた腰を振り出した!

ペースを速くする。

イかせてもらえるうちに、イっておかないと・・

へこへこ、へこへこ。

僕だけが一生懸命腰を振る。

びちょっ、べちょっ。

逢瀬さんは、僕から一滴残らず吸い取るつもりなのか、僕に密着している。

手で、むちっとした太ももで、腰で、また僕を押さえ込んでいる。

僕は逢瀬さんの唇を奪い、無理やり舌をからめた。

逢瀬さんも僕の口内をベロベロと激しく舐めてくる。

上と下の口で濃密に結合したまま、僕はイきそうになる。

んっ。

またいく。

好きな人のなかで。

好き。

大好き・・

ぼんやりと、僕と逢瀬さんが結ばれる結婚式を妄想した。

肉棒が快楽に屈して、ひくりとする。

精巣から精子たちが湧き出し、イカくさいネバネバと混ざって尿道を流れていく。

ほんの短い時間でそれはペニスから吐き出され、再度、逢瀬さんの子宮壁を汚した。

「あはははっ。どうするの?ま○こ依存症になっちゃうぞ。」

「はぁはぁ・・」

「ふふふふ、おちんち○、まだ固いね。これも体操服の威力かな?それともお金払ってヤってると思うと、興奮する?」

「もう僕、自分で自分をコントロールできない・・」

「エッチな気持ちが萎えるまで、やめらないねっ。」

「ごめん、またイかせて・・」

「ホント、しょうがないヤツ。あたしのま○こに惚れちゃったんでしょ?」

「そ、そんなんじゃないよ、君が好きだから・・」

2人の腰が前後運動を再開した。

こんなこと、何度もして・・

僕、おかしくなってるよぉ・・

紺色の布地が、下腹部をこする感覚。

ぶるまーーー!!

ぶるまの女の子とセックスしてる!!

ぐぅっと、ペニスは炸裂しそうなほどに充血する。

膣の中で搾られては腫れ上がり、腫れ上がっては搾られる肉棒。

何度も搾られたのに、また射精したがってる!

愛の行為というより、ち○この拷問だ!!

しかも苦しいどころかとっても気持ちイイから、何度もしちゃう!!

好きで好きで好きで、もう・・

愛してる愛してる愛してる愛してる・・

舌と舌を何度も何度もからめあって泥沼の愛に溺れる。

パンパン、パンパン・・

2人の腰の動きがまた速くなる。

「あたしと結婚したい気持ち、もっともっと強くしてあげるね。」

「気が狂っちゃうよぉ。」

「大丈夫、面倒みてあげるから。」

「ええ!?ほ、本当!?」

「その代わり、君のお金はぜーんぶあたしがもらうからね?」

「うん、も、もうそれでいいよ・・いいから、結婚してっ!!」

ああん、ううっ、またスゴク気持ちよくなってきた・・

いっぱい出したいよお・・

ペニスはひくひくして、絶頂が近いことを示している。

僕は逢瀬さんのからだをまた強く抱く。

「うふっ。赤ちゃんの素、また出したいのね。」

パンパン!

パンパンパン!

「うっ・・!」

ドビュッ!!ビュッ!!ビュウッ!!

僕の全身が震え、逢瀬さんの子宮に精子たちが一挙に吐き出される。

「あ・・か、はぁ・・」

目の前も頭の中も、真っ白。

逢瀬さんの子宮も、きっと真っ白だ。

「ぁぁ・・はぁ・・・逢瀬さん。」

僕は逢瀬さんの乳房に頬擦りする。

これだ、この満ち足りた瞬間が欲しかったんだ。

彼女は、僕の頭を右手で優しく撫でた。

「そんなにあたしをママにしたいの?」

僕は柔らかい乳房に、顔を押し付ける。

「ママになって。」

逢瀬さんの濃い匂い。

「うふふふ・・」

「このまま死んでもいいよ、逢瀬さぁん。」

香水と雌の匂いが混じった、強い匂いだ。

どこか懐かしい匂い。

「逢瀬なんて子はどこにもいないよ。あなたの目の前にいるのは、一匹の悪魔。」

「君は、逢瀬さんだよ。将来の奥さんなんだ。」

僕は顔を押し付けたまま、喋った。

「現実から逃げちゃだめよ。あたしは淫魔。ほら、君のやってたゲームにも”サキュバス”って名前にも出てたじゃない。」

僕を追い払うような言葉を投げかけてくる。

「勇者様は、こんな誘惑に負けちゃだめよ。」

「僕たちは夫婦になるんだ。」

「あたしは男の子を騙す悪魔だぞ。」

そんなの関係ない。

甘えていたいんだ。

「君はいつか、僕と同じ人間になるんだ。」

「そんなこと・・」

彼女は笑った。

「ないわよ。」

「世の中、何があるか分からないよ。」

「逆に君が淫魔になったりしてね!?アハハハハ・・」

僕は彼女の胸に押し付けていた顔をあげた。

ミーナの豊かな髪は少し乱れていた。

微笑みつつも、どこか物憂げな表情で僕を見つめる。

「気持ち、よかったでしょ。」

「もし君のことを憎んでいても、好きになりそうなくらい。」

「そ。そうやって、男をどんどん奴隷にしちゃうの。」

「もう・・抵抗できないや。」

「日ごろの調教の成果よ。どーだ、恐れ入ったか。」

「・・日ごろか・・あっという間の1ヶ月だったなぁ。」

「そうだね・・」

「これからもずっと一緒にいたいなー。」

「そういう気持ちになるよーに、あたしが調教してあげたのよ。」

「罠!?」

「エロ仕掛け。」

「なるほど、回数も多くなるわけだ・・」

「ここまでくれば心配ないわ。黙ってても君はついてくる。」

「やってばっかりだよなあ。」

「エヘへ。本読むと、いろいろ試したくなるんだもん♪」

「ほら、でも僕ら、他にやらなきゃないことあるんだよな。」

「なんだよぉ。」

「・・淫魔猟兵の試験データもそろそろ集めないとな。」

「あっ!?あはははは、ずっとサボってたもんね。」

「ほんと。リサさんからも先週電話きたしなあ。」

「エヘッ、昨日あったときも”そろそろヤバイ”って言われたよ。」

「昨日会ったのかよ。」

「うん!カーナさん怒ってるって。」

「そろそろヤバイ、マジヤバイ。こりゃ、こっちも超ガンバルしかないな。」

「超ガンバレ、マジガンバレ。」

「ひとごとかよ。・・・放課後、やろうか。」

「・・それ、答え悩むよね。どっちのヤル?」

「このぉっ、今の話の流れからして分かるだろ!?」

ミーナはクスクスと笑った。

「そーだ、妊娠告白シーンがなかったね?」

「えっ?」

「今のプレイの話よ。遊びまくって妊娠ってお話だったでしょ。」

「そうだった。すっかり忘れてた。」

「やっぱり放課後、続きしようよ。あたしが妊娠して、君が自暴自棄になって腰振りまくるってシチュエーション。あはっ、すごくいいよね?」

「そ、そう?」

「現実から逃げて、エッチにふけるのって最高よね。」

確かにちょっと萌えるなあ。

そして放課後。

保健室。

僕たちは保健体育の実習をしていた。

子供の作り方の実習っす。

「あーん♪もっとぉ、おなかに注ぎ込んで〜♪」

ドピューッ!!ドピュッ!!

「あぁぁああぁぁああぁぁ・・気持ちいいぃぃ〜♪」

「もっともっと、あたしのまん○でイって〜♪」

セーラー服姿の逢瀬さん。

下腹部がぽこっと膨れている。

幻術を使ってるとはいえ、マジで妊娠してるようにしか見えない。

セーラー服の妊婦さん。

現実だったら、カナリまずいシチュエーションっす。

先ほどまで騎乗位で僕の腰に座っていたが、今は僕に覆い被さって正常位。

上と下の口で結合して、密着状態。

こういう状況大好き。

僕が犯されてるみたい。

れろれろ、ねちょねちょ、パンパンパン・・

「逢瀬さん、逢瀬さぁん、まん○気持ちいいよぉっ!!」

パンパンパンパン!!

逢瀬さんが激しく腰を振ってくる!

僕もそれに答えるように、強く彼女の腰を押さえて、下から彼女の子宮を突く。

「妊娠してくれっ!!」

「ばかぁっ、もう妊娠してるよぉ!!」

「ああああっ!?そ、そっかぁ!?ごめ・・いくっ!!」

「やん、だめ、赤ちゃんにザーメンかかっちゃうっ!!」

ドピューーーッ!!

「はぁっ・・はぁ、あ、はぁっ!?あっ、ぁ・・ぁ・・!?」

突然体から力が抜けたかと思うと、目の前が真っ暗になった。

体が軽くなっていく。

暗黒の中、遠くで声が聞こえる。

「おーい、気絶しちゃうなよー。しっかりしてよーっ。」

う・・うん・・

「ほおら、しっかりしてよ。悪かったよ、搾りすぎたのは謝るから・・」

う、うん・・

僕は目を開く。

逢瀬さんが困った表情で僕を覗き込んでいた。

「あはっ、気がついた!」

ぱっと表情が明るくなる!

また精子を吸われちゃう!

おなかいっぱいの意思表示しないと・・

確実に・・

殺される・・

「逢瀬さん・・僕・・もう・・」

「分かった!またイきたいのね!一滴残らず搾ってあげるからね!」

え・・ちが・・

逢瀬さんは、張ったおなかを僕の腹に擦り付けつつ腰を揺すってくる。

「んはっ、ひぃ。気持ちいい・・!」

「ふたご、作ろうね♪」

パンパン!パンパン!

逢瀬さんは、僕の肉棒を膣のひだひだで締め、激しくしごいてくる。

パンパン!パンパンパンパン!

「お、逢瀬さぁん、また僕・・!」

膣に収まったペニスは、生殖器ではなく精液噴射器となっていた。

「ああん♪エッチなミルク、美奈のおなかにかけてーっ!!」

「あ、あ、あ、・・・ええっ?また、い、いくぅぅ!?」

「ちょうだぁい、いっぱい濃いの出して、赤ちゃんたくさん産みたいのっ!!」

どぴゅるるる、どっぴゅーー!

彼女が搾るまま、肉棒は精を噴き出す。

「はぁぁあぁああ!!逢瀬さぁぁぁあん!」

彼女の腰の奥。

子宮壁をたたく、いやらしい白濁塊。

「・・あん、またドピュドピュしちゃったね。」

「ぜぇ、ぜぇ・・はぁはぁ・・」

「すけべー。」

「・・・え・・・」

「へんたーい!もう、ブルセラ男ってあだなつけちゃう。」

そんなあ。

僕は逢瀬さんの背中を愛撫した。

セーラー服の上から。

「裸でするより、着たままでするほうが興奮するって時点で、へんたいよね。」

「君が好きだから、興奮するんだよぉ。」

「ちょっと可愛い子で制服着てれば、誰でもいいんじゃない?」

「そ、そんなことないやい。」

逢瀬さん、いや、ミーナは上半身を起こして僕の愛撫から逃げる。

彼女は制服のスカートを捲り上げる。

「ふーっ。まん○ばっかりしてると、頭おかしくなるぞ?」

いまさらそんなこと言われてもなぁ。

彼女が腰をすっとあげると、女性器に収まっていたモノが抜け落ちる。

真っ赤でびんびんになったソレ。

反り返っている。

「本気で、心が壊れるわよ。」

彼女の秘部から、蜂蜜のように白濁液が滴り落ちた。

「これでも結構心配してるんだからね。」

僕の竿からも、付着した精がたれて僕の股間と白いシーツを汚す。

「そんな、まだやりたいよ!これじゃあ生殺しだよぉ。」

「もう。今日はこれで15回もイってるわよ?」

「じゃあ20回目指そうよ。」

「ウフフフフッ、次はセーラー服でイかせてあげる。」

「えっ!?」

彼女は背伸びするように、すっとセーラー服を脱いだ。

美しい曲線を帯びた絶世の美少女の上半身が、あらわになる。

白い謙虚なブラでは隠し切れない、発育のよい胸。

肉感的な腕。

キスしたくなるような胸元。

「なんてきれいなんだ・・」

「どう?練習の成果よ。こうやって、男を騙すの。」

「そう・・なんだ・・魂まで抜かれてしまいそうだよ。」

「一度淫魔の餌食になったら、逃げられない。」

「逃げないよ。君にすべて捧げるんだ。僕だけの女神様に・・」

逢瀬さんは無言で、脱いだセーラー服の袖を僕のペニスに巻きつけた。

「おま○こ思い出して、射精してね。」

「うん・・」

逢瀬さんは優しい微笑みを浮かべながら、セーラー服越しに僕のペニスをしごいてくる。

こんなきわどいシチュエーションに、興奮しきったペニスが耐えられるわけもない。

一分も待たずにイきそうになった。

シコシコ、シコシコ・・

「アっ、だめっ。」

「ううん、気持ちよくなっていいんだよぉ?セーラー服にザーメンかけたいでしょ?」

シコシコ、シコシコ、シコシコシコ!!

「むひっ、イイっ!」

「いっぱい出して。おなかに出したみたいに、たくさんかけて。」

シコシコ・・

彼女の手コキが速くなる!

と、ペニスは限界に達した。

ビュルッ、ビュッ!!

「ああっ!?」

精液は、水平方向に飛び出してベットのシーツにかかった。

身震いして射精する僕を無視して、逢瀬さんは僕のちん○をしごく。

イきながらも、ペニスが固くなる!

「肉人形、だね。」

「はーはー・・、そ、そんな、僕・・」

「セーラー服、気持ちいいでしょ?あたしのま○こじゃなくて、セーラー服で性欲処理できる体にしてあげるね。」

「だめ、そんなのぉ。」

「今度はちゃーんと制服にかけさせてあげる。どこに出したい?胸?おなか?ネクタイ?どこが一番愛しい?」

彼女は、器用にセーラー服の胸の部分を亀頭に擦りつけてくる。

「永遠の愛を誓うのよ、セーラー服に、ね♪」

シコシコ、シコシコ。

シコッ、シコッ・・シコシコシコッ!!

すべすべのセーラー服が僕の竿や亀頭に張り付いて、さすってくる!

気持ちっ・・いいよぉ!!

「あひ、あひ・・」

「うふん、セーラー服と結婚する?それとも、ブルマのほうがいいかしら?」

「え、あ、あは。はひ。」

シコシコシコシコ。

「ほおら。好きな人のセーラー服だよぉ。我慢しなくていいから、はやく出して♪」

我慢も限界だっ。

ていうか、そもそも我慢してないし!!

「君の愛、いっぱい服にかけて。お願い♪いいでしょぉ?」

とどめ。

仰向けになった僕に再度覆い被さってくる。

彼女は僕の唇を奪った。

互いに舌をこすり付けあう。

その間も、『セーラー服まきつけ手コキ』は繰り返される。

「あむ、あぅ、ん、ひぃ、い、いっ・・」

僕の悲鳴は、彼女のキスに押さえ込まれた。

どんどんペニスが高まっていく。

もうイきそうだ。

そう思った途端、一気に堰が切れた。

ぶぴゅっ!!ドピュッ!!

女を孕ませるための白濁液が、女子高生の制服の中ではじけて染み込んでいく。

射精しながら、空しい想いに襲われた。

純愛を求めながらも、倒錯した快楽を与えられているのだ。

それを僕は気持ちイイと思っている。

逢瀬さんはキスをやめて、僕の体を離れた。

しわしわになったセーラー服を伸ばして仔細に観察する。

「ずいぶん濃いの出すわね。あんなに昼に搾ったのに、まだ濃いの出せるんだ?」

「はぁはぁ・・ひぃひぃ・・」

「ちょっとやりすぎたかしらね。」

「はかはか、はかはか・・」

「フフフ。どう?欲望の充足と引き換えに、精をヌかれた感想は。」

「からだがおもいよぉ・・」

逢瀬・・じゃなくて、ミーナは、だらしなく口をあける僕をみて、嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「キミのせいで、制服汚れちゃったじゃない。どうしてくれるのよ。」

「ごめん、謝るよ。」

ミーナは、両肩を引っ張ってピンと伸ばした制服を、僕のほうに向ける。

「オスの匂いがついちゃったぞ。着たら妊娠しちゃうよ。」

「ぜ、ぜひ着てください!!」

「ばか。」

彼女は僕に背を向けると、イカ臭くなってるはずのセーラー服を着た。

袖を鼻に近づける。

「あは、やだ。ほんとに匂いするよー。」

僕からは彼女の後ろ姿しか見えないため、どんな表情かは窺い知れない。

「ドキドキしちゃう。やぁん、この匂い。」

「こっちまでドキドキするよ。」

「赤ちゃん欲しくなっちゃう。」

僕に背をむけたままで言う。

「ほれほれ、もういるじゃない。」

もこっと張った彼女のボテ腹。

後ろから見ても、妊娠してるのは明らかだ。

「ああっ、このまま外にでるところだったわ。危ない危ない。」

彼女はそっとおなかに触る。

「あはん、戻さなきゃ退学処分になっちゃうね♪」

ミーナは振り向いて、僕におなかをさすって見せた。

「ほら、嬉しそうにしないのっ♪」

「なんだよ、喜んでほしいんだろ?」

さらに3回ほどフェラチオしてもらって、僕は尽き果てた。

学校から帰ってくると、すぐ夕食。

僕とミーナで2人で作る。

ミーナの魔法で晩飯を準備できないこともない。

だけど、2人で何かしたくて、絆を確かめたくて食事を作るんだ。

食事が終わればこんどはお風呂。

今は一緒に入っている。

そして就寝。

ゲームしたりテレビみたりって行動はなくなってしまった。

生活の中で『エッチ』がしめる割合が大きくなりすぎて、他の趣味はどうでもよくなってしまったのだ。

とはいえ、今日は精をヌかれすぎた。

もう一滴も出ない。

体を寄せ合って、一つの布団で寝る。

僕も彼女も寝相はいいみたい。

いびきがうるさいとか、問題はおこってない。

僕がねむりかけたときだった。

ふっと、頬を撫でる空気の流れ。

僕は目を覚ました。

頭を右に倒す。

暗闇の中で、僕を見つめるひとみがふたつ。

「なんだよ。おなか減った?」

「ううん。ねぇ、あのさ。」

「暗くて怖いとか言わないでくれよ。」

「ばか。違うわよ。あのさ、明日、あたしの母さんに会いに行かない?」

「えっ、君のお母さんって・・淫魔だよな?」

「大丈夫。とって食べたりしないから。」

心配だなあ。

「あたしの愛奴だよって紹介してあげる。エヘヘ。」

「変な紹介しないでくれよな。」

「明日、一緒に行こうよ。」

大人の淫魔なんてちょっと怖い気がするけど、僕は誘いを受け入れることにした。



「ねぇねぇ。ひでっち。」

翌日の放課後。

僕はミーナを連れて、教室を後にする。

「昨日からシテないけど。大丈夫?」

「大丈夫だよ。少しくらいしなくても、へーき。」

「すっきりしてる?」

珍しい質問だな。

「うん。まあ・・」

僕は玄関に向かって早足で歩く。

「ねっ、ねぇねぇ。」

「なんだよ?」

僕は足を止めた。

「ちょっとでいいからチューさせてよ。」

「なんだ、おなか減ったんだな。」

「違うよ。」

食事じゃないキスってことは、精気を吸わないキスなのか。

ふふーん。

『石の上にも三年』じゃなくて『淫魔の上にも1ヶ月』だ。

あれだけ抱き合っただけに、コイツなりに情が入っちゃってるわけだ。

「じゃあ、体育館倉庫いこうか。」

「うん、少しだけでもいいから・・」

ホント、可愛いヤツ。

手はつながないけど、彼女は僕と並んで歩く。

僕はふと、セーラー服の胸元に目をやった。

赤いネクタイがとっても可愛いが・・

アレ!?

おっ!

ぱい!!

おっぱい!!

おっきくなってる!

昨日よりも一回り胸が大きくなっているような。

制服の白い布地の下、ブラに押さえ込まれながらもアピールを怠らない胸。

でぃ、Dカップかな、Eカップかな。

前のサイズでも結構ボリュームあったのに。

巨乳とはいかないまでも、かなりの豊乳。

パイズリできそう。

「ウフン、どーこみてるのかなーっ!?」

「あっ、その・・」

顔から湯気が噴き出した。

「あはっ、赤くなったぁ。」

「そんな大きい声で言わないでくれよ・・」

コイツが近くにいるだけで、廊下だろうが教室だろうが注目浴びるんだからさ。

「楽しく子孫繁栄できるようにしてあげたのよ。あたしってさ、優しいよね〜。」

彼女は声のトーンを下げて言った。

「子孫繁栄ってなあ。今のキミじゃ無理でしょ。」

肝心のアソコが封印されてるんだから。

オナホール使ったエッチしかできない。

「あたしじゃ無理だけど、他の子にひでっちのアレ渡せばできちゃうよね。」

できちゃうよねって、あのなあ。

「気づいたら5児の父になってました、なーんて。」

「”なーんて”じゃないっ。」

「二ヒヒヒヒ。最近ひでっちの多いから食べきれないのよ。少しぐらい人にあげてもバチはあたらないわ。」

なんて言ったらいいか分からない。

この子が好きで、この子とエッチして、この子に射精する。

この子はそうして得た精液を、他の淫魔に渡し子供を孕ませる。

そっか。

そうだよな。

コイツ、サキュバスなんだもんな。

それくらいして当然なんだよ。

釈然としないけど、きっとごく当然なんだ。

僕がその事実を受け入れたくないだけなんだ。

「ちょっと、そんな湿っぽい顔しないでよ。」

「別にそんな顔してないよ。」

「ひでっちの、あたしたちにとっては貴重なものなのよ。」

「そうなんだ・・」

「賢い子のを使うと、賢い子が産まれるの。人間だってそうでしょ。」

賢いサキュバスが産まれるのか・・

僕の精子で・・

サキュバスが・・増えていくんだ。

「捨てるくらいなら他の子にあげるわ。有効利用よ。」

「複雑な心境だよ。」

「悲しい真実を教えてあげよっか。」

「なんだよ。」

「どんなに複雑な心境になっても、あたしを手放すことはできないの。」

「おまえな、そんな調子じゃ寝首かかれるぞ。」

ミーナはけろっとして、僕に笑ってみせる。

「やってごらんよ。できないから。絶対手放せない。」

僕たちは体育館の入り口についた。

中は静か。

まだ建って数年の新しい設備だ。

そのまま黙って体育館倉庫に入る。

僕は後ろ手でドアを閉め、すばやく鍵をかけた。

何もいわずに、立ったまま彼女を思い切り抱いた。

匂いも、ぬくもりも、ふくよかさも、全部僕だけのもの。

この子のすべてが僕だけのものなんだ!!!

むさぼるように彼女の口内に舌を押し込んだ。

しばらくその状態を楽しむ。

息継ぎのため、僕は一度唇を離した。

「聞きたいことがあるの。」

僕の気持ちを覗き込むような、彼女の目。

いつの間にか、彼女の両手が僕の肩を抱いている。

「お母さんに会う前に、聞いておきたいことがあるのよ。」

「なんだよ。」

「選んでほしいの。」

「何を?」

「人として生きるか、あたしの恋人として生きるかを。」

「キミの恋人になるに決まってるだろ。」

「じゃあ、人間の世界に背を向けることになるよ。」

「どうしてだよ。」

「あたしたち一族と人間の社会を壊すことになるから。」

「だめだ、そんなの。」

「恋人が無理なら、人として生きるしかないね。」

「人として生きて、君を恋人にするんだ。」

彼女は首を振った。

「無理。人の道を選ぶなら、あたしは別な恋人を選ばなきゃないの。」

「何を言ってるんだ、ミナの気持ちが分からないよ!」

「あたしと結婚する気なら人間をやめて。せめて気持ちだけでも、悪魔になって。」

「そんな・・・。」

「結論から言うと、どっちも嫌なんだよね。キミはわがまま。あたしが欲しい、でも人間としてこの世界で生きていきたい。淫魔には協力したくない。」

「何言い出すんだ、急に。どうしたんだ、変だよ。」

「あたしのお母さんって、女王様なんだよ。淫魔に協力しない男を、あたしと結婚させると思う?」

「ミーナは・・じゃあ・・王女様・・」

「あたしと結婚するには、皆に認められないとダメ。」

「どうしてそんな大事なこと、いまさら!」

「あたしだって、急に言われたのよ。」

「そんなのって・・」

「ねぇ・・諦めて。あたしの体なしじゃ生きられないのよ。もうあなたは人じゃない。人間として生きることを諦めて、あたしと暮らして。」

「君も、君のからだも好きだけど、でも・・」

「理性が重荷になってるのよ。仕方ない。あなたを獣にして答えを導くしかない。後悔しないでね。」

ミーナはぎょっと僕に体を押し付けてくる。

やーらかい二つのマシュマロちゃんが、僕の胸をさする。

「あたし、本気出したらすごいんだぞ!?」

僕は彼女と唇を重ねる。

チュッ、チュッ、チュッ。

キスだけで恍惚となる僕。

気が付くと、もう唇は離れていた。

「恋人コースしかないのよ。」

「そうみたい。」

「あとは、人間に背を向ける覚悟。」

「・・・うぅっ・・・」

「大丈夫、今気持ちよくして忘れさせてあげる。」

「気持ちイイのが終われば、また苦しくなる。僕には、心があるんだよ。」

「あたしのこと愛してくれてるんでしょ!?お母さん、待ってるの。早く諦めて。」

「待って、待ってよ、こんな重大なこと、いますぐ決められるわけないだろ!」

「昨日保健室でした話覚えてる?リサねぇに会ったっていったでしょ。今日の夜7時までにどうするか選ばせて、母さんのところに連れてきなさいって言われたのよ。」

「ええっ!!そんな、急すぎるよ!あと2時間しかないじゃないか!!」

「そうよ。」

「どうして昨日の夜、話してくれなかったんだ!」

「・・・」

「おまえっ、こんな大事なこと、なんで黙ってたんだ!!!」

「怒鳴らないでよ。」

「まさか、わざと黙ってたのか!?」

「聞く気がなかったの。無理やりここで君を犯して、恋人コースを選ばせようと思った。」

「僕が・・・・・欲しかったんだな。」

「君の気持ちを無視してでも、欲しかった。でも、いざここにきたら、君に選んで欲しくなったの。」

「悩むよ。」

「やっぱり、あなたを獣にして体に答えてもらうわ。ごめんね?あたし、できないの。あなた以外の人を抱くこと。」

「僕だってできないよ!君が・・・すべてのはずなのに・・・どうして僕は・・」

「すべてなんかじゃないのよ。他にも大事なものがあるんだわ。」

「何度もキミがすべてだって思ったのに。そう、思い込んでただけなのかな・・」

「あなたはこの世界を守りたいの。」

ミーナを抱いて目の前が真っ白になる瞬間、いつも、この子がすべてだって感じた。

口も生殖器も溶け合って、2つの存在が1つになる、あの瞬間。

でも、そんな気持ちはあの瞬間だけなんだ。

僕は、この子のために己の魂をあけわたす気はないのか・・。

やっと今、そのことに気づいた自分。

認めたくない、そんなこと。

僕たちは愛し合ってるんだ!

すべてを捨て去れるはずなんだ!

「家族、友達、故郷、思い出。人は、いくつも大切なものをもってる。分かるよ。あたしたちも同じだもん。」

ミーナはにこっと微笑んだ。

どこか悲しそうに。

「選べるわけ、ないよね。」

「捨てられないよ、何も捨てたくない。急すぎるよ、どうしてこんな急に・・」

言った直後、言わなければよかったと思った。

ミーナが遠くにいってしまうような気がした。

「重大な選択こそ、すぐに決めてもらわないと。決められないということは、あなたには素質がないのよ。」

後ろで声がした。

「ママ・・!?どうしてここに!?」

ミーナは僕と抱き合ったまま、僕の背後の存在に叫んだ。

淫魔の女王が僕の後ろにいるのだ!

「かわいそう。」

女王の声。

その声は、若い女の声だった。

けれど、ミーナのように男をくすぐるような音色ではない。

「な、なにがだよ!なにが、可愛そうなんだ!」

僕は頭に血が上って怒鳴る。

そして、ミーナの腕をがっちり掴んだまま振り向く。

僕は息を呑んだ。

僕のすぐ後ろに立っていたもの・・

それは・・

全裸で真っ白な肌。

体毛と呼べるようなものはなく、真っ黒な頭髪だけが腰まで伸びていた。

目と鼻はない。

ひどく裂けた口からは、無数の短い牙が飛び出している。

だらしなく垂れた乳房。

背中の翼には、こうもりのつばさ。

サキュバス。

人間はこの存在をそう呼びつづけてきた。

夜な夜な男の夢に現れ、精をむさぼり食う邪悪な存在。

それが、目の前にいるのだ。

やや痩せた体つきのソイツは、腕組をして立っていた。

「あなたは、ミナの夫にはなれない。」

「ママ、お願いだからやめて。そんな姿、どうして見せるの!」

「あきらめがつくようによ。ミナ、あなたも本当の姿をおみせ。」

「いやっ!」

「悪いけど、このぼうやの未来は私が選ぶわ。」

「待って、時間をちょうだい!」

「ミナ。分からないの?この男はあなたに命を捧げる気がないのよ。」

「違う。同じくらい大事なものが二つあるのよ。だから困ってるの!」

「ふたつを天秤にかけて、ぼうやは結果を出せない。愚かなぼうや。」

「そんなことないっ!どっちも大事だから、結果が出ないのよ!」

どっちかなんて選べないよ・・・

この子を選んで人間であることを捨てるか。

人間であることを選んでこの子を捨てるか。

そんな選択、できるわけない!

「そうさ・・どっちも大事なんだよ。」

「ミナのことは心配しなくてもいいわ。毎晩会わせてあげる。夢の中で、ね。枯れ果てるまで注ぎ込んでいいわ。子種は全部他の淫魔たちがもらうけど。ぼうやが快楽に溺れている間、現実の世界でミナは他の男の子を宿す・・」

「そんなことするくらいなら、この場で殺してくれ。」

「殺したら、ぼうやの精液が手に入らなくなるじゃない。ぼうやの子種で何百という子供をつくり、人間を食わせないと私の気がすまないわ。」

「もうやめてママ。お願い。」

「淫魔猟兵の開発を遅らせた上に、娘の気持ちまで弄んで。腹が立つぼうやだこと。」

「いんま・・りょうへい・・。あたしが悪いんだよ。ひでっちを誘ったから・・」

確かにエッチばかりしてた。

データの催促があったのに。

悔しくてじわっとなみだがあふれてきた。

「ミーナ、淫魔猟兵の開発は他の男と進めてもらうわ。」

「いやです。」

「いやといっても、無駄にしている時間はないの。」

「どうしても、だめなの!」

「なら、力ずくでいくしかないわね。」

と、女王の囲むように霧が立ち込めてくる。

いや、違う!

霧じゃない!

半透明のサキュバスたちが、姿を現したのだ。

その数は・・・9体。

女王を含めて10体。

狭い倉庫のなかでひしめきあっている。

僕とミーナは同時にあとずさった。

こいつら、姿を隠していたのか!

「守ってみせる。」

そういうと、ミーナは意を決したように目をつぶった。

セーラー服の上からペンダントを握る!

「待て!やめろ!!」

僕は、彼女の手首を掴んだ。

彼女が目を開くと、大粒の涙があふれる。

「どうして。一番大事なものを守るための力なのに・・」

「君の家族だろ!?」

「あたしは、家族よりあなたが大事なの。あなたがすべて、あなたしかいないの。」

その言葉は、僕の胸を締め付けた。

熱いしずくがいくつも、僕の頬を伝って落ちていく。

見詰め合う。

止まる時間。

そしてそれは、また動き始める。

「ラプチャー・ドリーム・テンプテーション!ドレスアップ!」

真っ黒な閃光が、彼女の胸から瞬く。

次の瞬間、暗黒が周囲を包み込んだ。

僕の腕の中にあった彼女のぬくもりは、消えてしまった。

彼女は戦うことを選んだ。

血族を敵にまわしてまでも、僕と共に生きることを選んだのだ。

僕が答えを導けなかったせいで、彼女に問いが降りかかった。

大きすぎる犠牲を払って、彼女は今、答えを出したのだ。

僕のために。

待ってくれ。

こんなのって。

狭い体育館倉庫から、魔性の暗闇が消えた。

淫魔猟兵、サキュバスの群れ、そして少し離れて僕がいる。

いつのまにか、サキュバスたちは、黒いオーラを帯びた長剣を持っていた。

鎌を振り上げて、その刃を同族に向けるミーナ。

数秒、にらみあいが続く。

先に攻撃をしかけたのはサキュバスたちだった。

次々に切りかかってくる。

すばやい攻撃に防戦の一方のミーナ。

しまった!

こんな狭い空間じゃ、長い鎌は不利だ!

僕が淫魔猟兵に指示を出そうとした瞬間。

ミーナの金切り声。

一体のサキュバスの剣が、ミーナの右腕を切った。

淫魔猟兵の愛らしい紺色の手袋に、真っ白な体液が染み出てくる。

一団の動きは止まった。

「くぅっ・・」

「状況に応じて武器を選べ。並の淫魔であれば、今の一撃で片腕になっているぞ。」

ミーナを斬ったサキュバスが言った。

「言われなくたって!カオスレピアーっ!」

ミーナの手の中で、鎌は細身の剣に変わった。

今度はミーナが切りかかった。

剣と剣がはじきあう金属音。

ミーナの全周囲を敵が囲んでいる。

『後ろからくる!右にかわせ!』

『うん、分かった!』

僕の目は彼女の目。

僕とミーナは、一心同体になって戦いの中にいた。

後ろからの攻撃をかわし、淫魔猟兵は果敢に反撃する。

「このっ!!」

しかし、どんなに彼女が攻めても、相手に傷を負わせることができない。

「えいっ!」

今度は別のサキュバスに攻撃。

また、かわされる。

「あなたに、私たちは倒せませんわ。」

強い。

一体一体がラブリーナイトよりも強い気がする。

動きがいい。

それぞれが連携して、1つの集団として攻撃してくる。

僕は一瞬腕時計を見た。

変身からもう4分経っている。

大丈夫か?

この調子じゃ、時間切れで変身が解ける!

こんなにてこずる相手は初めてだ。

『ミナ、ソニック・スピードを!』

『やりたいけど、時間がかせげない!』

くそっ、ソニック・スピードの印を結ぶ時間さえあれば・・

『ミナ!!』

しまったと思ったときは遅かった。

敵2人が同時にミーナの背後に回りこみ、左右からはさむように剣で突く。

2つの切っ先は彼女の背中に深く突き刺さる。

ミーナは短い悲鳴をあげ、武器を落とした。

サキュバスが剣を抜く瞬間、真っ白な血しぶきが上がる。

がくりと床の上にひざをつき、四つんばいになるミーナ。

「はぁ、はぁ・・」

背中を、同時に二箇所突かれた。

一団の動きがまた止まった。

追い討ちはない。

ゆっくりと立ち上がるミーナ。

「あっ、・・はぁ・・はぁ・・こんなことで・・」

ミーナは歩こうとするが、ふらふらして踏みとどまった。

「あれ、目が・・かすむ・・剣は・・どこ・・?」

彼女は、左手で目をこすった。

「よく、見えない・・」

背中の白い染みは少しづつ大きくなっている。

出血してるんだ!

『ミナ、回復の魔法を使うんだ!』

『うん、やってみる・・』

「あーく・・はぁはぁ・・」

詠唱にならない。

ゆっくりとした動きで、苦しそうに胸を押さえた。

「はぁっ!はあっ・・!」

彼女の呼吸はどんどん深くなっていく。

立っているだけで精一杯なんだ。

『系統状態:異常。帰還率が50%を切りました。作戦を変更するか、上位の戦闘モードへ移行してください。』

ペンダントから、ミーナとは違う女の声がした。

『致命的な損傷を検知:背部。心拍数低下が深刻です。』

なんだって!?

『帰還率が40%を切りました。作戦を変更するか、上位の戦闘モードへ移行・・・』

上位の戦闘モードだって?

『致命的な損傷を検知:内部器官。心拍数下限逸脱発生。血圧下限逸脱発生。』

『ねぇ・・・ねぇ、あたし、たってられない・・』

僕は頭が真っ白になった。

ミーナは辛そうな表情で、目をつぶった。

その顔色は病的なほどに青ざめていく。

このままじゃ・・

僕の体中に、冷たい汗が吹き出る。

怖い。

この次に起こることが。

『ねぇ、聞こえてる?聞こえてたら、返事して。叫びたいけど、声がでないの。』

『聞こえてる!聞こえてるよ!!!』

『よかった。』

彼女の表情は一瞬和らいだ。 『からだが重い、どうしたらいいの。』

『どうしたらって・・』

僕が答えようとしたとき。

ミーナの体がふらっと揺れて、前向きに倒れた。

床の上に突っ伏す。

彼女の目は閉じていた。

『おい、ミナ!!』

『ごめん。守れなかった。』

『系統の戦闘能力、喪失。帰還率が30%を切りました。系統保護のため、上位の戦闘モードへ強制移行します。強制移行、開始します。』

倒れたミーナを、柔らかい光が包んでいく。

『あ・・・あたし・・死ぬのかな・・力が入らないよ。』

『違うよ、君は死んだりなんかしない!絶対に・・!』

彼女の目が開いた。

『あたし・・』

彼女はぼんやりした表情で、僕のほうを見つめた。

『ひでっちが見えるよ・・。』

『君はまだ生きてる。死ぬもんか。』

僕とミーナが見詰め合う間、みるみる彼女の顔色に生気が戻ってきた。

『ああ・・不思議・・苦しくない・・。』

ミーナは、ゆっくりと床に手をついて立ち上がる。

神秘的な光は、次第に弱くなり消えた。

『致命的な損傷から回復:内部器官、背部。』

「・・あたし、まだ、戦える・・」

ミーナは床に落ちた細身の剣を取って構える。

『上位の戦闘モードへ移行終了。心拍数下限逸脱復帰。血圧下限逸脱復帰。系統状態:正常。』

「すごい・・、力がみなぎってくる!」

ミーナの顔に、再び闘志が蘇った。

「いくわよっ!!今度は、負けない!!」

彼女は、目にも止まらぬ速さで攻撃にうつる!

突き、断ち、切る。

素早い攻撃でイニシアチブを握る。

さっきのできごとが嘘のようだ。

間違いなく、死の一歩手前までいったはずだ。

あれほどの深手を負っても、無事だというのか。

無事どころか・・・

より強い力を得たように戦っている!

囲まれてもなお、敵を圧倒する戦乙女。

丁丁発止の末、彼女の剣はついに敵を斬った。

「なにっ、この私を・・」

胸から肩にかけて、斬られた痕。

白い血が、ぱっと吹いた。

「このメル・オム・サイーナ・セルシェイドを斬るとは。」

「相手が誰だって!!!」

ミーナは叫ぶ。

周囲のサキュバスが退く。

メルと名乗るサキュバスと、ミーナが後に残った。

「久しぶりに本気を出させてもらうか。」

メルの足元から炎の柱が上がり、天井まで届く!

その炎は、爆発するように内側から外側へ飛び散った。

その中から現れた者。

それは凛々しい姿の、20代の女だった。

ポニーテールの黒い髪。

表面が波打つ漆黒の甲冑に身を包んでいた。

顔だけを露出している。

身長は、ミーナよりも一まわり、いや二まわり大きい。

両手には、漆黒の長剣が2本握られていた。

二刀流・・・!?

「参られよ。女王陛下の血を継ぐものよ。」

ミーナは深呼吸する。

2人の距離は、3mあるかないか。

淫魔猟兵の呼吸は止まった。

両手で剣を握る。

「うわぁぁぁっ!!」

吼え、なだれ込むようにメルに突っ込んだ!

「それっ!!」

メルの左腕が電光石火の速さで振り下ろされる。

狙うのは、ミーナの首!?

首をはねようっていうのか!

剣が首にあたる紙一重のところで、ミーナは斜め上に飛び上がった!

「なに・・!」

驚くメル。

「上かっ!!」

大きく振りかぶった分、外れた隙が大きかった。

右手の剣を振り上げる間に、頭上のミーナが剣を振り下ろす。

メルの首のつけね。

鎧から露出した部分。

そこを狙って、ミーナの切っ先が降ってくる。

すんでのところで、メルの右手が間に合う!

乱暴にミーナのわき腹を叩こうとするが、彼女はすばやく打撃を剣で受けた。

しかし、メルの馬鹿力を受け止めきれず、ミーナは吹き飛ばされた!

剣では時間がかかる。

『一撃で仕留めるぞ。対物ライフルでヤツの顔を狙うんだ。』

彼女は空中でひらりと一回転し、見事な着地を披露する。

距離が離れている。

7mはある。

メルが上段と下段で剣を構え、突っ込んできた!

「へカート!」

ミーナは叫ぶ。

淫魔猟兵の武器は、剣と魔法だけではないのだ。

剣が、瞬時に形を変えて70cmほどの不恰好なライフルになった。

彼女はそれを両手で構える。

メルはもう、目の前にいた。 ミーナは銃を敵の顔面に向ける。

「私には通用しない。」

メルははき捨てると同時に、剣を振った。

2本の剣が、ミーナの首を狙って振り下ろされる。

ミーナは逃げない。

ただ、引き金を引く。

12.7mmの徹甲弾が、銃口から飛び出た。

このフランス製対物ライフルは、音速の三倍近い速さで大口径の機銃弾を発射する。

建築物の壁越しに兵士を狙ったり、装甲車両、軍用ヘリコプターに使用するものだ。

メルは、”銃”は知っていたかもしれない。

しかし、そのひ孫の威力は知らなかったのだろう。

大きな射撃音についで、メルの顔はこなごなに飛び散り、なくなった。

へカートが放つ弾丸は、メルの肌を守る不可視の障壁を貫通したのだ。

弾丸が後方の壁を貫く音と共に、メルは床に崩れ落ちた。

即死だった。

あるはずの頭がなくなり、首から白い液体が湧き出ている。

ミーナは振り向いた。

サキュバスの一団と向き合う。

「ウフフフ、ミナ、あなたの負けよ?」

一体のサキュバスが笑い出した。

「負けですって。この状況で、どうしてあたしが負けなの?」

「あと5秒であなたの変身は解けます。」

馬鹿な!

僕は時計を見た。

まだ5分は余裕がある!

「第二戦闘形態は消耗が激しいの。それにあなたは、蘇生機能も発動させている。」

淫魔がいい終わると同時に、ミーナは漆黒の輝きを帯びた。

「ああっ!!そんな・・」

ミーナの戦闘服が溶けるようになくなる!

髪の毛も、見事な金色から黒へと戻っていく・・

「こんなことって!」

ミーナは淫魔猟兵の力を失い、セーラー服の女子高生に戻った。

「どうして!」

彼女はこぶしを握った。

「個々の戦闘で勝ったからといって、戦争に勝てるとは限りません。ミーナ。お母さんはそう教えたでしょう?」

「くぅっ!こんなはずじゃ!」

余裕の表情を浮かべる女王を前にして、僕らはなすすべもなく立ち尽くしていた。

万事休す、か。


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