『悪のヒロインとエッチしましたが何か問題でも?』

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本SS(短編小説)は、2011年から2015年ごろまでwisper様に掲載されていた作品です。
挿絵については、絵を制作された鈴輝桜様に許可を頂いて掲載しています。

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できるだけ物音をたてないように、錆びの目立つ螺旋階段を上っていく。

ユカリは黒を基調にした地味な私服に身を包み、ユウキがいるはずのアパートに潜入しようとしていた。

すでに日の入りを迎え、あたりは闇に包まれていた。

尾行は今回初めてというわけではない。

かといって、こっそり人をつけていくのはどうも得意ではなかった。

螺旋階段は各階の踊り場があって、出入用の扉があった。

一度4階まで上がってみる。

かすかに淫気を感じたのは、2階のみ。

ユカリは2階内部につながるドアまで下りて、静かに侵入した。

廊下の天井には蛍光灯があり、明るい。

古い建物ではあるが、各部屋に人がいるようでそれなりに片づけられているようだ。

(さて、どの部屋かな・・・)

微量の淫気を探るためには、しばらく立ち止まって精神を集中する必要がある。

この場合は各部屋のドアの前に立たなければならないが、そんなときに住人が顔を出したら大変だ。

(ともだちをさがしてるんですって、言い訳するしかないね。)

手前の部屋から調査を開始する。

深呼吸して目をつぶり、無心になる。

高位の淫魔になればなるほど、淫気を残さない。

特にミカは、ユカリ以上の実力の持ち主だ。

そもそも淫気を察知できない可能性もある。

(絶対みつけなきゃ!だって、そうしないと・・・ユウキくんが!)

淫気はない。

ユカリはとなりの部屋の前に立った。

目を閉じること10秒。

ドアの向こうからゾクっとする熱気が漏れてきている。

(淫気!?・・・間違いない!)

顔をあげる。

ドアに表札はないが、ユカリは室内にサキュバスがいることを確信した。

ゆっくりとドアノブを回し、引く。

ふわりと扉が開いた。

(ラッキー!超ラッキー!鍵、かかってない!)

ユカリは躊躇なしに玄関に忍び込んだ。

部屋の中は照明が灯っていた。

6畳の狭い部屋。

壁掛け式の空調機が動作中で、暖かい。

窓際にはベッド。

枕が二つ。

手前には一人用の木製机があった。

何かが置かれている。

(誰もいない?)

ユカリは部屋の真ん中に立ち、周囲を確認する。

確かに、人が住んでいるのは間違いない。

(時間も時間だし、晩ご飯食べにいってるのかな。でも、確かに強い淫気がこの部屋から・・・)

机の上には、手のひらサイズの人形が転がっている。

布と詰め物で作った女の子の人形。

(サキュバスもこんなのつくるんだ?)

好奇心がわき起こり、ユカリは人形を手に取る。

手を押し返す柔らかな感触と同時に、首がぽろりと抜け落ちる。

人形の首が机に落ち、転がった。

ユカリの目は首を追う。

首は少し転がって机の中程で止まった。

彼女の視線は戻り、人形がおいてあった場所を捉える。

それを見て、彼女は人形を手離した。

人形に隠されていて気づかなかったが、人形の下には赤いインクかなにかでメッセージが残されていた。

”おまえはこうなる”

その文の意味を理解して、ユカリは後ずさった。

「い、いや!」

転がった人形の頭から、突然髪の毛が延びてユカリの腕や脚に絡みつく。

「ひぃっ・・・」

悲鳴をあげるが、遅い。

彼女は得体のしれない繊維質の糸に、全身を拘束されてしまう。

人形の首は高く跳ねると天井に張り付いた。

ユカリの体も上にひっぱられ、宙吊りになった。

「首を絞めてこのまま殺してやってもいいんだけど。」

女の声。

いつの間にか、ベッドの縁に少女が腰掛けていた。

さらにそのそばに、ユウキが寝かされている。

意識はあってこちらを見ているが、ユカリと同じように黒い髪の毛に体を絡め取られ身動きできない。

「ユウキくん!」

「ユカリ!」

「よかった、生きてた!」

二人のやりとりを聞いて、少女は憮然とする。

「ユカリっ!ユウキさんは私が頂くよ。おまえには渡さない!」

「それはこっちの台詞よ!それよりも、あなた誰!?名乗りなさい!」

「私はミカ。ユウキさんに気に入ってもらえるように、少し見かけを変えてみたんだ。」

「気に入ってもらえるようにって?何いってるの?どうしてそんなことするの?」

「この戦いは、ユウキさんの心を手にした者が勝つ。だからだ。」

「ユウキくんは、あんたなんかに騙されない!」

「なにをっ!」

セーラー服姿のミカはすっと立ち上がると、右手で天を差し変身の構えをとる。

「ターンアップ!」

かけ声とともに、ミカの全身は一瞬真っ黒な影に包まれる。

影が晴れると、彼女の服は戦闘コスチュームに変わっていた。

その様子を後ろから見ていたユウキが、髪で体を縛れているにも関わらず歓声をあげた。

「うおおおおおおおおおお!」

肉付きのよい脚とそれを覆う黒いタイツ。

気休め程度の長さのミニスカートの下には、どうみても学校指定の紺色のブルマーだ。

ユウキの目が上に移ったのと同時にミカが振り向いた。

「ふふっ、可愛いでしょ?」

上は丈をつめたセーラー服のようになっていて、へそからしたの腹部が露出されている。

頬をすり付けたら心地良さそうなくびれたお腹のラインが、丸見えだ。

「すっごく可愛い!失神しちゃいそうだよ!」

考えるより先に言葉がでてしまうユウキ。

「ユウキくん!しっかりして!その姿に騙されちゃダメ!!」

「う・・・うん・・・」

「あたしも負けてられない!・・・へんっ!しんっ!」

ビシュッと電撃の走る音がして、ユカリは蒼い光に包まれる。

人形の髪もまた光に包まれ、光る粉となって床に落ちていく。

彼女を拘束していた髪が朽ち、ユカリは床の上に着地した。

まばゆいばかりの光が止むと、ブレザーを模した戦闘服のユカリが姿を現した。

「闇あるところに光あり!愛と正義の使者!まじかるユカリン改、参上!」

「フンっ、おまえが変身したところで誰も喜んじゃくれないよ。ユウキさんが喜んでくれるのは、私が変身したときだけ。ね、そうだよね?」

ミカはまたユウキのほうを振り向いて色目を使う。

「そりゃもちろん・・・ううっ、その脚を見せられると、ナニが・・・うううっ・・・」

「ふふふっ。体は正直なんだよね。脚を見てると欲情しちゃうの?ふふふっ、変態!」

罵られた瞬間、ペニスからぐぽっと我慢汁の固まりが吹き出した。

愛しくてたまらないミカの端正な顔立ちを見つめるユウキ。

その瞳に、ユカリが映し出された。

瞬きするよりも速く、ユカリはミカのそばに駆けより、剣をその胸に突き刺す。

セーラー服の背中が破れ、銀色の切っ先が勢いよく飛び出した。

ミカはユウキのほうを見たまま、ユカリの一撃を浴びた。

ユウキの顔から血の気がひいた。

「な・・・なんてこと・・・」

「悪魔を倒さないと、みんな、奴隷にされちゃうんだよ?」

抗議するようなユカリの口振り。

彼女がサキュバスから剣を引き抜くと、白く濁った体液が吹き出した。

がっくりと崩れ落ちるミカ。

「そんなことって!」

彼の瞳から涙がこぼれ落ちようとしたとき、サキュバスの死体は真っ黒な固まりに変わる。

ユカリが身構えるのと同時に、それは飛びかかり絡みつく。

それは髪の毛だった。

ツヤのある黒い髪の毛。

それが塊となってユカリを襲っている。

「こいつ!?まだ生きてるの!」

ユカリの顔は動揺に染まる。

「生きてるどころか、何か倒したつもりにでもなったのか?ふふふふふっ。」

倒したはずのミカが、ベッドの縁に座り涼しい表情でこちらを見ていた。

先ほど剣で胸を貫かれたはずのミカが、目の前に座っているのだ。

「そんな!」

「残念だったな。これは言ってみれば常套手段で・・・」

みるみるうちに髪の毛はユカリの体を這い回り、縛り上げ、その自由を奪っていく。

「く、くぅ!?また、この髪!!」

「おまえのような猪突猛進タイプにはうってつけの戦法なのだ。しかも、だ。この髪は先ほどのものよりずっと丈夫。色々な意味で残念になってくるな。」

ユカリの前で、ミカはにやりと笑ってみせる。

「おまえの性格を私が読んでしまったのは、残念なことだ。そしてさらに、ユウキさんを奪われてしまった・・・おまえにとって、とても残念なことに。」

「ユウキくんは渡さない!絶対に!」

「ユウキさんはまだおまえのことが気になっているようだ。だから、この場でその気持ちを捨ててもらおうと思ってるんだ。」

「そんなこと、絶対させない!」

「今宵は面白いショーを見せてやろうと思ってる。ユウキさんと私の交わりをおまえに見せようと思っている。特に、愛のある交わりだ。」

「えっ・・・!?」

「おまえが一番見たくないものを見せてやる。ユウキさんにとっても辛いかもしれないが、これは仕方ないことだ。ユカリという存在を心から消すためには苦しみが伴う。」

「そんな、ひどい!酷過ぎる!」

「フフフフッ、そう喜ぶな。緊張感を演出するために、ショーの見せ場を作ることにした。3分間の持ち時間で、ユウキさんの性器を私の性器に導く。」

「いや!だめだめ!だめ!そんなことしちゃ!」

「おまえはいやだろうが、ユウキさんは喜んでくれるぞ?うふふふっ。それで、もし彼の性器が快楽に耐え切ったら今宵のショーは終わり。」

「もし耐えられなかったら!?」

「おまえをこの場で殺す。」

「ミカさん!それはだめだ!ユカリを殺す気なら、もう君とは話さない!」

ユウキの強い口調を背中で受け流して、ミカは目を細めた。

「やっぱり、嫌がるのね。わがままばっかり言って困った人。でも、あなたの言うとおりにしていたらユカリは倒せない。」

「ユウキくんは、ユウキくんは・・・ユカリと一緒にミカを倒すんだよ!」

「悪い、ユカリ。それ、俺にはできない。ミカさんは殺させない。」

「ユウキくん!どうして!どうしちゃったの!ユウキくんはどっちの味方なの?ユウキくんは、ユカリの味方なんでしょ?」

「悪いけど、ミカさんが大事になっちゃったんだ。」

「しっかりしてよぉ・・・お願い!お願いだから、いつものユウキくんに戻って!」

「ユカリ。この場でユウキさんにはっきりさせてもらおう。私を選ぶか、おまえを選ぶか。先ほどのショーの見せ場。ユウキさんが3分耐え切れなかったら、私はこれからユウキさんと暮らす。」

「えっ!?それって同棲するってこと?」

「少なくともおまえよりは、ユウキさんを幸せにする自信はあるが。」

「言いたい放題言って!・・・でも、殺されるよりはまだましだけど・・・」

「ユウキさん。それでいいだろう?ユカリが大事なら我慢すればいい。私が欲しければすぐイってしまえばいい。」

「う・・・、うん・・・どっちを選べばいいのか煮え切らないけど・・・一応、頑張ってみるか・・・」

「い、一応ってどういうこと?絶対頑張ってくれるんだよね?」

ユカリの言葉に、ユウキは頭を掻く。

「うふん、あたしが欲しいならすぐイっていいのよ?」

「それはだめっ!!」

ミカの言葉をユカリが激しく拒絶する。

「ミカさんの中で3分とか、無理だよ。1分とかだめかな?」

「だーめ♪だめだよ〜♪」

ミカはユウキの傍に座ると、彼を縛る髪に触れる。

すると、髪は巻き取られるように縮まって、ミカの腰までの長さに戻る。

四肢が解放されて、ユウキは上半身を起こした。

「ミカさんに入れたら、すぐ果てちゃうよ・・・」

「それでいいんじゃない?」

ミカはにこにこして、ユウキに寄り添った。

「ほんと、見てるだけでイッちゃいそうだよ。この服もすっごく可愛いし。」

「んふふっ。いいでしょ?」

「すっごくいい!ちょっと勝負にならない感じ。」

「じゃあぁ〜♪降参ってことであたしの勝ちにしない?」

ミカは頬ずりした。

「えへ、えへへへへ・・・でへへへ・・・」

「じゃ、あたしの勝ちね?」

「こ、こら!勝手に話すすめるな!そ、それにユウキくん!なんでデレデレしてるのよぉ!」

ユカリに割り込まれ、ミカの眉毛は明らかに吊り上がる。

「うるさいやつだ!分かった!ではこうしてやる。ユウキさんには少し練習をしてもらう。」

「れ、練習って?どんな練習だよ?まさか・・・」

「うふふっ。ユウキさんの想像どおり。体が気持ちいいことになれるまでピュッってするの。でも調子にのってピュッピュしてると・・・どうなるかしら?」

「それ、だめぇ!あたし、どんどん弱くなっちゃう!」

「アハハハっ!愉快愉快。ユウキさんが気持ちイイことしてるそばで、おまえが衰弱死しそうになる。楽しみでしょうがないわ。」

「かといっていきなり本番したら、絶対もたないぞ。」

「何回か精子だしておかないとね?ユカリのためだと思って、練習しよ?」

「でも練習って、どう練習しようか・・・。」

ユウキがそう言うと、ミカは彼の手を引いてベッドから降ろした。

「立って。」

ミカは自らが立って、ユウキに背中を見せる。

「あたしの脚でおちん○を擦るの。君は後ろから抱きつくの。気持ちよくなってきたら、いっぱいあたしに甘えていいのよ。ユカリの前で。」

「え・・・」

「え、とかいってるわりに、本当はドキドキしてるんでしょ?背徳感たっぷりの甘甘脚エッチ。断る理由はないよね?」

「ユウキくん・・・お願い、とにかく我慢して。サキュバスの誘惑に耐えて・・・」

「さ、練習ですよ。ユウキさん、後ろから抱っこして?」

ユウキはミカの背後から抱きついた。

「だ、だめぇ!我慢してっていってるのに!誘惑に負けちゃだめぇ!」

左手で乳房を掴み、右手で太腿を撫でる。

髪の毛の中に顔をうずめると、春の花畑に寝転んだような幸福感が沸き上がってくる。

ユカリに聞こえないように、こっそりミカに耳打ちする。

「これ、勝ち目ないよぅ・・・」

ミカはすぐ、彼の頬にキスをする振りをして答えを返した。

「勝っても負けても結果は同じなんだから・・・」

豊かな乳房を優しく揉み、黒いタイツが魅力的な脚を撫でまわす。

「あっ・・・」

甘い吐息を漏らしてちょっとだけ身悶えするミカ。

ユウキの胸はいつの間にか激しく高鳴っていた。

(仮に勝っても、確かに結果は同じかもしれないな・・・ゴメン、ユカリ・・・)


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