『淫魔猟兵対美少女戦士』
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本SS(短編小説)は、2005年から2015年ごろまでWisper様に掲載されていた作品です。
<8>
キンコーン♪
エレベーターは18階で止まりドアが開く。
正面は白い壁。
左右に廊下が延びてるだけだ。
でも、どちらも少し歩いたところで階段に繋がってる。
あれ?
なんだこの階は。
左右の階段をつなぐ通路しかないではないか。
「資料室って、どこだよ。」
「ここよぉ、目の前だよぉ。」
目の前って、白い壁しかない。
「まさか愛の力で壁突き破れっていうんじゃないよな。」
「あら?こんなの愛の力をもってすれば、たやすいことでしょ?」
ミーナはぱっと両手を突き出すと、妖しげな動きとともに詠唱を始める。
数秒呪文を唱えて、最後に壁を指差す。
バチッ!!
彼女の細く優雅な指先から電光が飛んで壁にあたった!
と、驚いたことに壁に木目模様のドアが現れた。
「さすが、悪魔だな。」
「悪魔の中の悪魔、サキュバスのお姫様だもん。」
フフンと自慢してみせるミーナ。
「この中が資料室だよ。」
僕はミーナについてドアをくぐる。
中は整然とした広い書庫になっている。
ぎっしり本の詰まった棚ばかり。
ミーナは先頭になって本棚の間を歩いていく。
僕も歩きながら本棚を見ていくが、別にたいした本はない。
”家庭の医学”。
”世界の果実百科事典”。
”ナポレオンの軍隊”。
「その辺で売ってそうな本ばかりじゃないか。」
ミーナは立ち止まって振り返った。
僕のほうを見てにやりと笑う。
黙って手近の本を取り出す。
両手で本を開くと、それは溶けるように彼女の手の中で姿を変え、野球ボール大の水晶玉になった。
「あたしたちの歴史書。どこにも売ってないわよ?」
「またしても驚きだな。これが歴史書か・・」
「見てみる?これはね、・・”チセナ界決戦の記録”。年代はと・・アレ、いまから30年前だ。わりと新しいね。こんな戦いがあったなんて、はじめて知った・・」
水晶を覗き込みながら、ミーナは目を丸くする。
「一通り決戦モノは見たつもりだったんだけどなあ・・」
決戦モノって、空母とか戦艦とかでてきそうだぜ。
ってか、30年前?
この世界でもジャングルを舞台にした戦争が終結したあたりだな。
そのころ、こいつらはこいつらで戦をしてたわけだ。
「”我々、サイーナの群れはチセナにおいて、女神騎士ミリア率いる軍勢と交戦し勝利した・・”だって。サイーナって、あたしたちのおばあちゃんだわ。」
水晶を見つめていたミーナの目に、好奇の色が浮かんだ。
「これ、見てみようよ。」
「ミナが一人エッチしてるところが出てきたりして。」
「・・ひでっちがあたしのスクール水着姿でシコシコしてる様子かもね。」
「スクール水着か・・すごく似合うと思うぞ。」
「あのさ、今の、皮肉でいったつもりなんですけど・・間に受けられても・・」
「いいだろ別に。・・そんなこといって、本当にエッチな画像だったりして。」
「見てみれば分かるよ。きっと、すごいぞー。腰抜かさないでね。」
ミーナは両手のひらに水晶玉を乗せると、呪文を唱えた。
唱え終わったとたん、激しい揺れと光が僕らを襲う!
「うわっ!」
「きゃあっ!!!」
僕は目をパチパチさせながら、視力が回復するのを待った。
そして、次第に姿をあらわす眼前の風景。
核戦争後の世界・・・
そんな形容がぴったりの光景が広がっていた。
地平線の彼方まで続く荒地。
僕らはちょっとした高台で、それを見下ろしている。
土色の空。
二つの太陽がぼんやりとこの世界を照らしている。
地上にわずかに残る朽ちた建物は、かつてここに文明が栄えたことを物語っていた。
大小のクレーターや砕けた岩が点在している。
「どこなんだよ、ここは・・」
熱い風が、僕のほおを撫でる。
「チセナ。そう書いてあったからね。」
僕はミーナを見た。
「幻なのか?この世界は。」
「テレビと同じよ。あたしたち、水晶に封じ込めた記憶の中にいるの。」
「風の動きまで分かるんだな。たいしたもんだ。」
「・・もっとすごいものが見られるよ。後ろ見てごらん?」
僕は振り向いた。
「きっと、あたしのおばあちゃんの軍団よ。」
僕の背後に立っていたのは、無数の悪魔たちだった。
悪魔といっても角があるわけでも、羽があるわけでもない。
黒い全身鎧に身を固めており、一見人間の女兵士のように見える。
兜からかすかに見える目元は、皆女性のものだ。
戦旗をもつもの、槍や剣をもつもの、あるいは見慣れない八本足の獣に跨る悪魔。
背丈は僕と同じか、少し大きいくらい。
「神聖魔法反応!」
誰かが叫んだ。
彼女たちの言葉は僕にも理解できた。
淫魔たちは一斉に土色の空を見上げる。
「神の門が開きます!5・・4・・」
「さあおいで、死に急ぐ哀れな女神騎士よ。」
左右の腰に大剣を差した淫魔がいう。
装飾具の豪華さから、どうやら彼女が司令官のようだ。
急にあたりが明るくなった。
空には、まるで第三の太陽が現れたように、光の玉が浮いていた。
それはどんどん膨張していく・・
「2・・1・・0!来ます!」
光の玉は一瞬で消散する。
が、その中心から瞬く小さな輝きが現れた。
空中にわずかの間静止して、ものすごい速度でこちらへ向かってくる。
まるで、光の弾丸だ。
司令官は、篭手で包まれた右手をゆっくり天にかかげる。
と、一呼吸おいて右手でこぶしを作った。
高台にいる淫魔たちは、司令官のこの合図で次々と黒い炎に包まれていく。
それぞれ武器を構えるなり、上空めがけて垂直に飛びたった。
上空に伸びるこの黒い光の柱はものすごい数だ。
僕たちのいる高台からみえる、かなたの無数の黒い点。
僕が石と思っていたものは、すべて悪魔だったのだ。
凄まじい速さで空へ舞い上がる悪魔たち。
何千、何万という数だ。
空中でいくつもの群れを作った悪魔たちは、光の弾丸へ向かっていく。
と、光の弾丸が空中で静止した。
空気の振動が始まる。
「サイーナ様、どうやらやつは徹底抗戦にでるようですな。」
「たったひとしずくで、岩を穿つことはできまい。一人で何ができるというのだ。自殺行為とはまさにこのことだ。」
悪魔の司令官は、ため息をついた。
頭上で雷鳴がとどろく。
光の玉から無数の電光が伸びて、悪魔の群れに命中する。
その群れから、いくつもの点が零れ落ちていく。
「見て、やられちゃったよ。」
ミーナが落ちていく点を指差した。
また、雷鳴と電光が上空を揺るがす。
群れから叩き出され落下する悪魔。
光の弾丸は、それから何度も電光を発して悪魔を打った。
しかし、悪魔の群れをとめることはできない。
いくつもの群れが、光の弾丸との距離を詰めていく。
とうとう悪魔が光の弾丸を呑みつくした。
僕はその様子を見て体が震えた。
恐ろしい争いだ。
光の点は小刻みに動き始めた。
ばちっばちっと、光る点の周囲に時折火花が散る。
悪魔たちと戦ってるんだ。
「たった一人で戦ってるんだね。」
ミーナの言葉には、どことなく同情の色があった。
「見てるのが辛いよ。」
「どうして、降参しないのかな。」
「そういう相手じゃないんだよ。僕らの世界だって、あることだ。」
「命より大切なものがあるんだね。」
はるか上空で戦い続ける光点の絶え間ない動き。
命と引き合えに悪魔を一体でも多く倒そうというのだ。
しかし、その抵抗もむなしいものだった。
倒しても倒しても、敵の群れはまるで無尽蔵に襲い掛かってくる。
とうとう光点の動きは鈍くなり、そして落ちていく。
流れ星のようにまばゆい光の尾をひいて。
「捕獲を。」
司令官が言った。
「直ちに。」
近くの悪魔が答えた。
すぐに詠唱を始める。
左手を高くかかげ、右手で落ちゆく光点を指差した。
僕らとその悪魔の間に、鋭い突風が吹いた。
舞い上がる砂埃に思わず目を覆う。
再び僕がまぶたを開いたとき、目の前にはうずくまる人間がいた。
真っ白な甲冑を着た、金色の髪の女の後ろ姿。
籠手は破れ、鎧もところどころ割れている。
武器は持っていない。
「くぅっ・・」
女は両手を地につき、立ち上がろうとする。
しかし、立つことができない。
「これ以上何をしようというのだ。」
「分かりきったこと。おまえたちを倒すのよ。」
その声に、僕は思わずミーナと顔をあわせた。
女の声は、ミーナの声そのものだった。
ミーナと僕はほぼ同時に、女の前にかけよった。
「あっ・・!?・・・どうして・・・」
ミーナは、口を手で覆った。
僕も、女の顔を見て信じられなかった。
女は、ミーナと瓜二つだったのだ。
白い頬も金色の髪も煤で汚れ、疲れきったその表情。
しかし、目にはまだ強い意志の輝きがあった。
それはまるで、敵に破れた淫魔猟兵のように見えた。
「哀れな女神騎士よ、おまえの相棒に会わせてやろう。ヒーリシアスをつれて来い。」
「ヒス・・・・!ヒスが生きているの!?」
「そう、ヒーリシアスは我々の仲間になった。」
「な、なんですって!そんなことがあるものか!!」
淫魔の司令官の後ろから、二人組がゆっくり歩いてくる。
黒いマントを羽織った男。
男にべったりとくっついた若く髪の長い女。
その豊かな体つきは、女が淫魔であることを暗に示している。
そして、近づいてくる男。
僕はその男の顔を知っていた。
彼は、僕だった。
「ヒス!!」
女神騎士は一瞬立ち上がろうとするが、できない。
「ミリア・・ひさしぶりだな・・」
男のそばの淫魔はくすくすと笑った。
「残念だったわね、ミリア。彼はもうあたしの奴隷よ。」
「馴れ馴れしいぞ。」
男は、にやにやする淫魔の女をぎゅっと睨んだ。
「なによ、急に。こいつがそんなにいいわけ!?」
男は淫魔を横にのけると、両手でそっとミリアの右手をとる。
「ヒス・・どうしたらいいの・・」
「君には、もう抵抗する力がない。前の僕と同じだ。こうなったということは、負けたといことだ。」
「負けてなんか・・」
「今の君に何ができる?立ち上がることもできないのに。」
「敵の手におちろというの!?」
「それ以外に選択肢があると、君は思ってるのか。」
「そんなこと言ってないであたしを助けてよっ!!仲間でしょ!?」
「かつての、な。」
その瞬間、女神騎士の顔から血の気が引いた。
「この世界を焼き尽くした君を、助けることはできないよ。僕は、悪魔たちとこの世界を再生させるつもりなんだ。」
「・・・救いようのない不浄な世界ですもの!あなただって手伝ったじゃない!」
「何万という命が無駄に失われた。僕はその償いをしなくてはならない。」
「悪魔に魅入られた不浄な命になど、償いをする必要はないわ。」
「ひとつ聞く。降伏か。死か。」
「ヒス!?」
男は腰に差していた大剣を抜き、ふりあげる。
「よかったなミリィ、止めをさすのが僕で。」
「・・・ヒス・・・」
「僕らは取り返しのつかないことをした。その狂気をこの一太刀で終わらせるつもりだ。」
女神騎士は、かしずくように頭を低くした。
「・・天におわします慈しみの女神ティーナ様、このあわれなしもべの声に耳をお傾けください。・・お願いでございます、いつの日か、別の時間、別の大地で・・」
ミリアは目をつぶり、唱えるように続けた。
「・・ヒーリシアス・アム・エルダークと再び巡り合わせてくださいませ。願わくば、争いない、穏やかな世界の民として・・・」
「いい祈りだ。」
ミリアはヒスの声に反応しなかった。
まるで固まったように、幸せそうな表情で目をつぶっている。
頭上でブン、と風がうなった。
「だめっ・・!!」
ミーナがとっさにかなきり声を上げた。
ミリアの首が胴体から離れる。
首の付け根から、ばっと一瞬血が吹き出て、頭がぼくらのほうへ飛んできた。
ミリアの頭は地面におちると、一度小さくバウンドして転がる。
ちょうど僕らの数歩手前で動きがとまる。
ミリアは僕らに死に顔を見せていた。
穏やかな、まるで苦しみから解き放たれたような表情。
「いや・・・こんなの・・・」
僕は、ミナを抱きしめた。
「これは、もう終わったことなんだ。」
「いやだよ、こんなの。こんなのないよぅ・・」
僕の胸の中で、ミーナは泣き出してしまった。
彼女が泣いてる間に記録映像は終わり、僕らは書庫に戻っていた。
まるで泣いた子供のように目をはらしたミーナ。
「泣いても可愛いな。」
「・・見なければ、よかった。あんなひどい話。」
でも、これは本当にあった話なんだ。
映画でも劇でもない。
まるで僕らの生き写しのような、二人。
案の定、ミーナは家にかえるとすぐふさぎ込んでしまった。
ミーナがいつもの元気を取り戻すまで、一週間近くかかった。
まったく・・容姿が似てるとはいえ、淫魔の敵に同情してどうする!?
そんなに情にもろくては淫魔猟兵はつとまらんぞ?
困ったもんだ。
クリスマスを二週間後に迎えたある日の放課後。
あたりは暗くなってしまっている。
家路をいそぐ僕ら。
校門から出たところでミーナは立ち止まった。
「あれっ?」
珍しく、ミーナの携帯に着信音。
「あ、もしもし・・逢瀬です。あ、うん、はーい・・」
ミーナは何度か返事すると電話を切る。
「あたしのお財布、教室にあったって。」
「ミナ、財布もってたんだ、知らなかった!!」
「もってるわよ、それくらい・・馬鹿にしないで。なんとかデンキのポイントカードだってもってるんだから。」
「そりゃあ、失礼。で、本当にないの?」
ミーナは僕の問いに答えるように、かばんをあけてみせた。
「うん、ない。いつもかばんの中にいれてるんだけど。変だな〜」
「誰が教えてくれたんだ?」
「うん?わかんない。逢瀬さん、お財布机の上においたからとりにきてねって。」
「友達?」
「たぶん・・とにかく、あたしとりにいってくるね。」
そういうと彼女は、校舎の玄関に向かってダッシュした。
取り残される僕。
なんか変な話だな?
ひゅーーーー。
と、北風さん。
寒くて、僕は足踏みする。
「ううっ・・さむー。」
「あら、私が手袋でもあんであげよっか?」
気配を感じて後ろを振り向くと、以前公園で会った女の子がいた。
他校の制服。
青いブレザー。
「元気してた?」
「まあ、おかげさまで。」
「ちょっと相談があるのよ。お茶に付き合ってもらえないかしら。」
「人を待ってるんだよ。相談ならここでしてもらえないかな。」
「待ってても、すぐは来ないわ。」
「なんで分かるんだ。」
「私の仲間が、逢瀬さんの足止めをするから。」
「なにっ・・!」
「そう怖い顔しない。残念だけど、そういうことなの。」
女の子は、後ろに隠し持っていた拳銃を僕に向けた。
「殺す気はないけど、撃つことに躊躇はしないわ。」
彼女は一歩進み出て、僕の右ももに銃口をあてた。
「くっ!?」
「暴れなければ、撃たないわ。いうとおりにしなさい。」
と、胸のペンダントから声が響いた。
『ひでっち!!敵よ!!敵が教室に・・!』
『まんまとはめられたぞ。やつら、僕らを離ればなれにするつもりなんだ!』
僕らの教室に爆発が起こった。
ガラスが吹き飛んで、校庭に飛び散る。
誰かの絶叫。
『ミナ!』
『いますぐそっちにいくよ!!待ってて!』
女の子は爆発の方向を向く。
「くっ、これまでなの?もっとがんばってよ!」
そういうなり、左手で僕の肩をつかんで抱き寄せる。
「セイクレッド・ジャーニー!!!!」
彼女の叫びが終わるやいなや、天から光の柱が降りてくる。
真っ白で何も見えなくなり、体が軽くなった。
周囲を取り巻いていた光が消えると、僕は地下駐車場にいた。
しかし、車は一台も止まっていない。
「くそっ・・・」
「作戦勝ちってところかしらね。」
手ごわい人だ。
「あなたが最高でも、相方がおばかじゃ・・ね。私、綾乃。君は、秀平君ね。」
「綾乃さん・・僕をどうしようっていうんですか。」
「人質になってもらうわ。アイツを呼び出すための、・・餌よ。」
「忠告するけど、淫魔猟兵を怒らせるような真似はやめておいたほうがいいよ。」
「あら、忠告どうも。・・・さ、こっちよ。前に進みなさい。」
『ひでっち!?どこにいるの!?』
『どこか地下の駐車場につれてこられた。戦闘は終わったのか?』
『8人全員やっつけた。』
『上出来だ。じゃあ、すぐ変身を解くんだ。エネルギーを無駄に使うな。』
『うん。』
『リサさんたちと相談して、助けにこい。こいつら、僕を人質に使うつもりだ。正面から来れば必ずやられる。僕ら、永遠に離ればなれだ。』
『い、いやよ!!そんなの!!』
『じゃあ、しっかりやるんだ。仲間と頭をめいっぱいつかうんだ!頼むぞ・・』
ペンダントからミーナのぬくもりが消えた。
こんなことなら、ほかのペンダントを用意しとけばよかったな。
さっきの変身で5分ぶんのエネルギーを消費してる。
残ってるのはあと10分か。
ほかの男とミーナが交われば、エネルギーも全回復だけど・・。
男はともかく、まずミーナが承知しないだろう。
二人の愛がなければ、何度やってもエネルギーは抜けてしまうのだ。
これは自分で試したわけじゃないけど、実験済みの事実だ。
さて。
僕らは、駐車場の隅にあるエレベーターに乗った。
エレベーターの表示はB2。
どこの駐車場なんだ?
デパートかな。
車が止まってないってことは・・
すでに店を閉めてるってことか。
家の近くの店舗の駐車場じゃないな。
少し離れた町に違いない。
そもそも、この子の制服も見たことないし。
「やっぱり、カノジョは大事なの?」
「もう家族なんだよ。」
エレベーターは地上1階で止まった。
エレベーターから出て、非常灯だけが照らす、暗い狭い通路を歩いていく。
工場かどこかなのだろうか。
突き当たりのドアをあけた。
僕たちは、夜の港湾地帯に出た。
タンカーや輸送船が止まっている。
僕は思わず立ち止まって見回した。
夜の潮風。
「海か・・相当遠くにきたな。」
「ああっ、これがデートなら最高なのにな。そう思わない!?」
「同感だけど、あんまりそういう気分じゃないな。」
「悪魔の手から救ってあげたのにぜんぜん感謝してくれないね。」
「救われたって認識が、まだないもので。」
「こっちだって、君が仲間とは思えないわねえ。」
「いつから仲間なんだよ。」
「・・・あとでじっくり教えてあげるから、前、進みなさい。」
僕が連れて行かれたのは、この港の倉庫のうちのひとつだ。
工場くらいの広さがあるわりに、中にはコンテナや貨物はない。
その代わり、10人ほどの同い年くらいの女の子がいた。
天井からぶら下がる水銀灯のせいで、倉庫の中は昼間のように明るい。
「綾乃先輩、おかえりなさい!」
倉庫の裏口から入った僕らを、女の子たちが迎える。
「へーー、この人がぁ・・淫魔猟兵のぉ・・」
女の子たちは互いに向き合ったり、僕を見たりして、にやにやしている。
「さあ、皆、準備するのよ。・・私はこれで、あの子を呼び出すわ。」
綾乃は、どこからか携帯電話を取り出した。
僕のだった。
「いつの間に!返してくれっ。」
僕が取り返そうとすると、すっと綾乃はかわす。
銃口が向いた。
「暴れない暴れない。・・・さ、皆、何してるの?準備準備。」
女の子たちが散っていく。
「仲間だなんだっていって、銃向けるのかよ。」
「まだあなたは仲間じゃないわ。目を覚ますまでは・・。」
「目ならとっくに覚めてるよ。今日は早く起きたんだ。」
「そういう意味じゃないわ。」
「じゃあ、どういう意味だよ。」
「あなたの頭が冷えたら教えてあげる。」
「そうかい。それで・・ミナをおびき寄せて殺すつもりなのか。」
「あなたしだいよ。私たちに協力するなら、殺さずにおいてあげる。」
「協力って、何をすればいいんだ。」
「ふふふっ、分かってるでしょ、悪魔と戦うのよ。あなたにはその力が眠っている。いずれ、儀式を重ねることで目を覚ますはずよ。」
「人違いじゃないのか。僕には、なんの力もない。」
「サキュバスの王女様があなたを選んだのは、あなたの力を骨抜きにするためなのよ。」
「ミナが僕を選んだのは、僕が、あいつの命を助けたからだ。」
「あのとき、ね。確かに、あなたは逢瀬さんの命を助けたわ。」
「あのときって、知ってるの?」
「だって私、ラブリーナイトだもん。」
「えっ・・・!?」
綾乃は僕にウィンクした。
「サキュバスもいいけど、穢れのない美少女戦士も、悪くないわよ♪」
「僕だって、君を敵にまわす気はないよ。」
「逢瀬さんに味方するの、やめてほしいなー。」
あからさまに色目を使ってくる綾乃さん。
僕は目をそらした。
水色のスカートとふくよかな生足、黒いニーソックスが見えて、また目をそらす。
ミーナ以上にこの人は危険かもしれない、そう直感した。
絶対に術中にはまっちゃだめだ。
油断すれば、自分がどうなるか分からない。
「逢瀬さんは、個人的な想いと自分の立場から、あなたに接近したのよ。そしてあなたのハートを射止めちゃったの。」
「ミナは、個人的な想いしかないよ。」
「だといいわね。大人たちが逢瀬さんをけしかけたとか、ね。それにしても、あなたは狙われてたってことよ。」
「だから、なんなんだよ・・」
「いい加減、利用されてることに気づいたら?」
「そんな言葉で僕らの仲は裂けないよ。」
「ふぅん、じゃあ、実力を行使するわ。」
「なんだって?」
「逢瀬さんがしたことと同じことを、私がするわ。その上で、あなたがどっちを取るか決めればいいわ。」
それは、許してよ。
ミナみたいにされたら、綾乃さんのことを好きになってしまう。
悲しいけど、自分でもよく分かってる。
からだを何度も何度も犯されると、抵抗できなくなっていくんだ。
それに綾乃さんの顔立ちも体つきも、ミナと勝負できるほど魅力的だ。
やさしく男心をくすぐる声も・・。
「・・・・それは、ミナと君の勝負がついたらだ。」
「もちろん!そのために、あの子をここに呼び出すの。最後の対決よ。あの子がここにきたら、あなたは解放するわ。正々堂々淫魔猟兵と戦ってみせる。そして・・」
綾乃さんは、言葉を一瞬飲んだ。
「私ときみが結ばれる。」
「ま、まってよ、結ばれるなんて。僕はただの高校生だよ。綾乃さんみたいな人は僕じゃつりあわないよ。」
「あらぁ、そんなことないわ・・私、秀平君がいいと思ってるわ。」
目を綾乃さんに移す。
綾乃さんは理想の男性をみるように、頬をあからめ僕を見ている!
すごいほれっぷりだ。
さっきまで平然と話してたのに。
いつのまに萌えあがったんだ!?
「綾乃さん、どうして僕なんか。」
「大司教様に、強化の魔法をかけてもらったの。それが、私の眠る気持ちを呼び起こしてしまったようなの・・・」
「綾乃さん、頼むよ、気持ちを収めて・・」
「分かったわ。ちょっと外の風にあたりましょう。」
僕らは入ってきた裏口から外に出る。
後ろ手でドアをしめる。
と、綾乃さんは僕に向き直り抱きついてきた。
「んっ!?」
驚く僕に、綾乃さんのディープキスが飛んでくる。
「んむっ・・むむっ・・」
やさしくたっぷりと愛情をこめて、綾乃さんの舌が僕の口内をこねくり回す。
同時に、ぎっちりと抱いた両手が僕の背中を撫で回した。
ラブリーナイトのおっぱいが青いブレザーごしに僕の胸を圧迫してくる!
さらに、鼻腔を犯し狂う制服の匂いが僕の理性をしびれさせる!
ごめんミナ・・
ごめん。
ごめ(ry
しばらく口内を犯される僕。
綾乃さんの魅力で、いやがることもできない。
それどころか、綾乃さんの太ももに手がいってしまった。
スカートの上から太ももをなでなで。
ペニスはすでに臨戦態勢だ。
薄れ行く理性。
いやまて。
ミナが言ってたけど、サキュバスの瘴気を吸った人間って、瘴気がないと興奮できないんじゃなかったっけ?
なんで人間である綾乃さん相手に僕は・・
しかし、そんなことはどうでもいいくらい気持ちいい。
さすがラブリーナイト・・
キスだけで、いとしくなってくる。
綾乃さんが、僕の唇を解放した。
「綾乃さん・・ずるいよ・・」
「からだがほしくてたまらないの。すごくあなたがほしい・・」
綾乃さんは、倉庫の壁に僕をおしつけて、ほっぺたどうしを擦り付けてくる。
すりすり、すりすり・・
「お願い、結婚して!!おねがーい!!」
「綾乃さん、目を覚まして・・」
「いやっ、こんな気持ちいい夢、覚めない・・」
「ま・・まさか・・・大司教って人が、綾乃さんにわざと変な魔法をかけたんじゃ・・」
「あはっ、私もそう思ってた♪私が君に惚れれば、逢瀬さんを殺したくなるわ。今だって、逢瀬さんを殺してあなたを奪いたいのっ♪」
綾乃さんは正気じゃない。
人を愛する気持ちと人を憎んで殺す気持ちがごちゃごちゃになっている。
まるで欲望だけが増幅されてしまったみたいだ!
「はめられたんだよ、僕ら!」
くそっ!!!
「秀平くぅん、この罠から逃れるには・・私のからだを満たすしかないわ♪」
綾乃さんは息を荒げながら、僕のズボンもブリーフも脱がす。
立ったまま下半身の身包みを剥がされてしまった。
そそりたつ我が欲棒。
「わお、見てるだけで妊娠しちゃいそう♪」
「ううっ・・」
「このたくましいのでいっぱい突かれちゃうんだ、それで白いのがぴゅーっと出て♪」
発情した雌犬のようになった綾乃さん。
こんな綺麗で純粋そうな人に、痴態を演じさせるなんて!
大司教とかいうやつ・・
絶対に許さない!!
そんな僕の怒りを無視して、綾乃さんはスカートをめくり上げた。
複雑なレースの施された黒のショーツ!
ごめん、大司教。
ちょっとは許してやるわ。
ちっとだけな。
むちーっとした太もももあいまって、僕は挿入したい気持ちになってきた。
「うふん、秀平くんの、すごい・・・先がぬれてるわ。はぁ、入れたい・・いいよね?」
綾乃さんの目には、もう理性の光がない。
誰かがここを通ったらだとか、仲間が呼びに着たらとかそういう思考はないのだ。
「ひでくんのおちん○○、もらっちゃうね!?」
ここで拒否したら、綾乃さんが僕にどう出るか分からない。
もう、ラブリーナイトでも少女でもない。
魔法をかけられて発情した獣なんだ。
「欲しいなら好きにしてよ。でも責任はとってくれよな・・」
「うふっ、じゃあ、・・いただきまーす・・」
綾乃さんがショーツを下げ、陰毛が現れた瞬間!
彼女の陰唇が飛び出して、僕のペニスをすぽっと飲み込んだ。
「うっ!!くはっ・・」
やべぇ、気持ちよくて恥ずかしい声が漏れてしまった。
っていうかそれより。
ふたなり?
っていいたくなる光景が、僕の目の前で展開していた。
綾乃さんの股間から象の鼻のようなものがのびていて、その先端に陰唇がある。
象の鼻の内部が膣で、僕の息子はすっぽり飲まれてしまっているのだ。
こ、これは・・
何度か、ミーナと経験してることだった。
サキュバスの情が高まって、性的衝動を抑えきれないとき、これが起こるのだ。
ミーナいわく、『精子と男のからだが欲しくて死にそうなとき』、こうなる。
と、いうことは・・
綾乃さんは・・・
「あはっ、やん、なにこれ。気持ち悪い・・ああん、でも、気持ちいい・・ああ・・」
綾乃さんの理性は一瞬目覚めて、すぐ深い眠りに落ちた。
「あはん、ま○こ気持ちいいっ、秀くん、綾乃の愛奴になって!!」
綾乃さんの生殖器官は、僕の肉棒を根元まで飲み込んでいた。
中はしっとりと濡れていて、勃起した膣襞が僕のムスコをわさわさと擦り締め上げる。
さらに膣壁が前後に細かく振動しペニスをしこってくる。
「ううっ・・」
ミナが騎乗位で腰を突いてくるときみたいだ!
ミナに調教を受けた僕の体が、はやくも射精を望んでしまう。
僕は両手で象の鼻を先を押さえると、自分から腰でつき始めた。
オナホールを腰で突いてる気分だが・・
目の前の綾乃さんの魅力と、膣内の器官が与えてくる快楽で、僕のペニスはさらにふた周り大きくなった!
「うくっ・・ぃぃ・・・」
膣襞が竿も亀頭も擦って締めてくる。
ミナよりも襞が多いようだ。
ちん○がむっちりと膣に包み込まれて、愛撫されている。
やみつきになりそうな気持ちよさだ!
ヌキ尽くされたい・・・
僕は綾乃さんの唇を求めて舌をだらしなく突き出した。
綾乃さんも僕の誘いにのって、再びディープキスが始まる。
上の口も下の口もつながっている。
ああ、いとしいよ・・
切なそうに腰を前後させる綾乃さん。
象の鼻を介してつながってるせいで、もどかしそう。
やっぱ、パンパンと腰を打ち合わせるのがいいよなあ・・
と思いきや。
ぎゅーーっ、ぎゅーっ・・
彼女の腰の前後運動と併せるように、膣襞がきつくペニスを締め上げてきた。
うくっ!?
亀頭と竿が無数の凹凸で圧迫される!!
膣壁の前後運動も併せて、正常位で愛し合うような快楽に襲われる!
こ、これは、気持ちいい!
好きになっちゃう!
僕は象の鼻から手を離し、綾乃さんの胸を青いブレーザーごしに強く揉む。
欲望に任せて、綾乃さんの体を求める。
その間にも、射精願望は強くなっていく。
たくさん子宮に出して孕ませたい。
孕んで欲しい。
僕の子種で。
綾乃さん!!!
愛してる!!!
愛してる!!!
「んふっ、んんっ・・」
綾乃さんの色っぽい声が、口元から漏れた。
ごめんね、ミナ。
はっきりいうよ。
綾乃さんのこと、好きになってしまった。
溺れちゃう。
けど・・いいや・・
このまま・・。
白い愛のほとばしりの瞬間がどんどん迫ってくる。
サキュバスの愛に満ちた責めに、僕が耐え切れるわけがない。
ペニスを飲まれて2分もたたないうちに、もう出したくて仕方がない気分だ。
僕は綾乃さんの甘いキスから逃れる。
「綾乃さん、中にだしちゃうよぉ・・」
「いっぱい出していいよ。いっぱい、いっぱい出して好きになって・・」
「大好きです!!綾乃さん!!」
「結婚・・しよーね・・」
思考回路が焼ききれた僕ら。
快楽を求めて腰を振る僕。
僕の愛を求め狂う綾乃さん。
膣内で射精する以外に、選択肢はなかった。
「あっ・・・いくぅ・・」
視力を失い、体が快楽に震えた。
綾乃さん。
これから一緒に暮らそうね。
びくっとした瞬間、ペニスは先端から白濁液を吐き出した。
どぴゅっ、どくん、どっくん、ぴゅっ、ぴゅ・・
大きすぎる快楽の波が僕の脳髄を麻痺させ、すべての動きが止まった。
噴出した精液は亀頭の周囲の肉襞にかかり、トロリと垂れていく。
貴重な養分を逃がすまいと肉襞は伸び、あるいは細くなり、精液を舐めとる。
肉襞はその先端に無数の小さな穴をあけると、そこから精液を吸収した。
「んふっ。おいしい・・・ねぇひでくん、いっぱい可愛がってあげるからね。」
綾乃さんは僕をひときわ強く抱き寄せた。
優しい声。
あたたかいからだ。
ここちよい香り。
しびれのように全身に広がる、綾乃さんへの愛。
この人と・・・・結ばれたい・・・
ペニスへの締め付けが一気に緩くなったかと思うと、急に涼しくなった。
ちん○が象の鼻からずるりと抜けたのだ。
「今度は綾乃と騎乗位しようね?」
「は、はい・・」
・・足腰ががくがくして、立っていられない。
「あん、ひでくんどうしたの?」
僕は綾乃さんの抱擁をするりと抜けて、地面にへたりこんだ。
やばっ、いまの一撃で凄まじい量の精力を抜かれてしまったぞ。
座ってるのもつらくて、僕は地面のコンクリートに両手をつく。
「あらぁひでくん、座ってプレイするのね?」
「え、いや・・はぁはぁ、その・・」
「いいわ。愛情も精液も全部抜き取ってあげる♪」
綾乃さんはそういって、僕をやさしく押し倒す。
僕は抵抗しようと、綾乃さんの肩に手をかける。
が、へなへななちん○同様、手足に力が入らない。
僕はあっさりと仰向けにされてしまう。
寝返りを打つこともできない。
一瞬、ほんの一瞬の愛のひととき。
あの瞬間に、僕はミナにも抜かれたことのないような精気を奪われたんだ!
複雑な気持ちになる暇もなく、綾乃さんは僕に覆いかぶさってくる。
固いコンクリートとやわらかい制服美少女にサンドイッチにされた僕。
「うふぅん、ひでくぅん。」
綾乃さんは僕にぴったり重なり、頬を吸ったり胸をなでたりしてくる。
綾乃さんの濃密な香りに包まれて、僕は綾乃さんの制服と肌の感触に溺れる。
「綾乃さん・・綾乃さぁん・・」
もうなすがまま。
肉奴隷だ。
「んっ・・もっと、もっとちょうだい、ひでくんの精液・・」
綾乃さんはわざと腰をくねらせて、へなへなち○こをスカートで擦ってきた。
摩擦の大きい布地の感触に、ペニスはあっという間に臨戦態勢となる。
もっと?
もっとだって?
これ以上吸おうっていうのか?
大丈夫なのか?
僕、まさか、死んだりしないよな?
綾乃さんに僕の心配を聞かせたい。
でも、綾乃さんは僕に唇を押し付けてきた。
「んむ、あむ、あむん♪」
綾乃さんは甘い声を漏らしながら舌を絡めてきた。
ま、どうでもいいか、綾乃さんに抱かれて死ねるなら・・・
「はむん、あん、はむはむ♪」
ぎょっと押し付けられる綾乃さんのおっぱい。
いっぱい口の中おかされて。
綾乃さんの綺麗な瞳が僕を見つめている。
あああああああああ・・・
綾乃さん、綾乃さん、綾乃さん・・
抱きたい・・
僕の女神様・・
体に力が入れば、綾乃さんを抱けるのに・・
急激に眠くなっていく。
どこか懐かしいぬくもり・・
ああ・・綾乃さん・・
ふっと、僕の体が軽くなった。
次の瞬間、まったくの暗黒の中に僕はほうりだされる。
僕は薄暗い空間で、一人ぷかぷかと漂っていた。
上のほうからはぼんやりとした光がさしている。
「ここは、あなたの夢のなかよ。」
すぐ後ろで声がした。
声のするほうを見ると、ラブリーナイトが宙に座っていた。
僕は彼女のすぐそばまで行くと、抱き寄せてキスした。
しばらく、深い深いキスを互いに楽しむ。
好きなだけキスすると、ラブリーナイトは僕の胸に寄り添ってきた。
目をつぶる彼女。
「ラブリーナイト、僕ら、はめられたんだ。」
「わかってる。でも、私にはどうすることもできない。私の一番弱いところを攻められているの。このいばらの手かせは、私には断つことができない。」
「僕に手伝えってのかよ。僕だって何もできないよ。」
「あなたはいつもサキュバスを抱いてるんでしょ?私の渇きだって癒せるはずよ。」
「アイツは手加減してる。こんなに吸われたのは初めてだよ。」
「もっと吸いたいの。あなたの。のどが渇いて苦しいの。」
「そんな・・僕、枯れ果ててしまうよ。」
「いいよ、一緒に死のう!?私はいいよ。」
彼女は頬を擦りつけてくる。
「よりによってサキュバスにされちゃうなんてね。もう、気持ちよければどうでもいいわ。ね?そうでしょ?」
「しっかりするんだ、ラブリーナイト。僕がなんとか助けてみせるよ。」
「うん、お願い。愛をたくさん注ぎ込んで欲しいの。さあ・・」
ラブリーナイトは僕からすっと離れると、宙にお尻をついてM字開脚する。
オレンジ色のミニスカートを、白い手袋でめくって見せた。
ショーツなどまどろっこしいものはない。
白くてふっくらした太ももと腰、綺麗なピンクの女性器。
現実と違って、生えてるのは産毛だけだ。
「子宮にいっぱい出していいよ。赤ちゃん、産んであげるから。」
綾乃さんは手袋に包まれた指先で、おま○こを広げてみせた。
「永遠に愛してあげる。さあ、一緒に気持ちよくなりましょう?」
僕は誘われるまま、綾乃さんの性器にちん○を押し当てた。
びんびんにたっている僕のムスコ。
「そうよ、それが欲しいの。なんでもするから、それを入れて。」
綾乃さんは、僕よりも肉棒のほうが欲しいんだ。
とほほ。
悲しい気持ちを紛らわすように、僕は一気にペニスを挿入した。
柔らかくてべとべとに濡れたヒダが、僕のペニスを歓迎する。
「いいわ!子宮まで突いて!」
言われるまま、僕はぐぐっと押し込んで、ゆっくり前後させる。
「もっと、もっと激しくして。こう、こうよ!」
ラブリーナイトは我慢できず、自分から腰を前後させてくる。
両手を僕の肩にかけ、がんがん腰をゆする。
両太ももは僕の腰をがっちりはさみ、獲物を逃がそうとしない。
「あ、あはん、最高!!」
なんてエロい女の子なんだ。
前後だけじゃない。
自分が気持ちよくなるように、左右に、円を描くような動き。
はぁ・・
綾乃さん・・・
最高だよ・・
「ああっ!!気持ちいいよぉっ!!わたしの、わたしだけのえさになって!!」
上気した表情で、綾乃さんは髪を振り乱して僕の肉棒を求めてくる。
すげぇ・・・
気持ちいい・・・
僕、セーラー服美少女戦士とセックスしてる・・
いつの間にか僕は己の使命を忘れて、目の前の美少女に夢中になってしまっていた。
僕は腰をフリフリしながら、捲り上げられたスカートごしに憧れの人のおなかを愛撫する。
さらさらした肌触りと、ふっくらした弾力がたまらない。
「綾乃さん!!綾乃さん!!愛してる!!」
「はぁん、わたしの奴隷になるのよ、もっともっと深く愛して!」
綾乃さんはがっちりと僕の肩を抱き上半身を僕に引き寄せる。
鼻先を擦り合わせて、僕らは何度もキスを繰り返す。
左手でラブリーナイトのお腹を責めつつ、右手でおっぱいを揉む。
レオタード状のコスチュームの布地は薄くて、まるで生でおっぱい揉んでるみたい。
「んくっ、綾乃さん、そろそろ・・」
「いいわ、きてっ、ラブリーナイトをいっぱい愛して。子宮に出して、お願い!!」
パンパンと、綾乃さんの腰に股を打ちつけ、僕はフィニッシュを迎えた。
イく瞬間、僕は肉棒を根っこまで差し込んで、子宮内に精液を注ぐ。
綾乃さんに、僕の種を植え付けるために。
射精の快楽が僕の全身を悦ばせる。
こんなに可愛い子の子宮に、射精したんだ・・・
僕は、われを忘れて感激に打ち震えた。
「はぁっ・・おいしい・・おいしいよ、きみの精。」
「・・あ・・綾乃さん・・すごくいいよ・・きれいだよ・・はぁっ、はぁっ・・」
「私を奥さんにしたかったら、もっと出すのよ。」
僕は返事をする代わりに、腰を振り始める。
肉棒は、さっきの射精で一瞬萎えたものの、すぐに回復している。
「赤ちゃんできたら、結婚してあげるわ。だから、たくさんお腹で撃つのよ。」
「分かったよ、綾乃さん、僕、綾乃さんにいっぱい出すよ・・」
僕は、腰の振りをより激しくした・・
どぴゅーっ!!どっくん、どっくん!
「あはぁん!!!!きゃはっ!!・・はぁ・・はぁ・・」
目を覚ますと、18回目の膣内射精を終えたところだった。
「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・ひでくん・・・」
綾乃さんはにっこりと微笑む。
その目からは、涙が溢れそうになっている。
「よかった、気がついて・・もう・・十分よ・・」
僕は騎乗位で綾乃さんにおかされていた。
捲くれたスカートには、ところどころ二人のラブジュースが付着していた。
僕の肉棒は、未だに怒張して綾乃さんの性器に収まっている。
「はぁっ、・・ひでくん、私、もう苦しくないよ・・渇きが収まったみたい・・」
綾乃さんはそう言って、腰を浮かせた。
抜け落ちるペニスと、ぼたぼたと垂れる精液。
僕の体はまったく動かない。
生きてはいる。
綾乃さんはスカートで、自分の性器を拭った。
「収まったのはいいけど、もう、あなた以外の人はお断りになっちゃったわ。責任はとってもらうからね。」
「綾乃さん、すごかったよ。」
「結婚式場、今から考えておこっと。・・・ひでくん、立てる?」
「無理みたいだ。まるで力が入らないよ。」
「アーク・ヒーリング!!」
綾乃さんの詠唱とともに、僕の体がぼんやり光る。
と、力がみなぎってきた。
魔法って超便利だぜ。
僕はよろめきながらも、なんとか立ち上がる。
綾乃さんが肩を貸してくれた。
「助けてくれてありがとう・・・ひでくん・・」
どうしよう。
僕、この人のこと本気で好きになっちゃったぞ。
綾乃さんは、僕の耳を舌先でつついて囁く。
「ねっ、秀くん、結婚して、結婚して、結婚して、お願い。」
心臓が引きちぎられそうだ。
僕はどうしていいか分からない。
サキュバスにされてしまった美少女戦士。
もし、僕が彼女を離れたら・・どうなるんだろう。
心の傷の深さといったら・・。
できない。
この人を一人になんかできないよ。
「結婚して、ね?ね?ねぇ・・うんっていってよぉ・・」
「分かった、結婚する。」
「よかった・・。ねぇ、忘れて、あの子のこと。」
「あ、うん・・なんとかやってみるよ。」
さらに10分以上ベタベタして、ようやく綾乃さんは僕を離した。
「結婚、しようね。」
なんとか獣モードから救ったけど・・
どうしたら今の綾乃さんを助けられるんだ?
そうだ、サキュバスのことはサキュバスに聞けばいい。
ミーナに聞けば、綾乃さんを元に戻す方法が分かるかもしれない。
『ミナ・・?』
ペンダントを服の上からさわり、問いかける。
返事はない。
「どうしたの。胸がいたいの?」
「なんでもないよ。もう中に入ろう。」
「ええ・・でも、ごめんなさい。おかげで私・・落ち着いてきたわ。」
「だいぶ、症状がよくなったみたいだね。」
「大司教様に言われてたの。覚悟はしてたわ。でも、こんなだなんて。」
敢えて『サキュバスみたいだ』とは言わない。
「さ、中に・・」
「まって。ごめんなさい・・私、ひどいことしてしまって・・」
「気にしないで。」
「ありがとう。・・それと結婚のことは、約束してほしいの。」
「約束する。」
「よかった・・・これで悔いはないわ。」
落ち着いた綾乃さんに背中を押されて、僕は倉庫に戻った。
倉庫では、すでに準備が終わっていた。
ところどころドラム缶がおかれ、その上に蝋燭が灯されている。
明るい水銀灯が天井にあるのに、どういうことだ。
ドラム缶は不規則な、しかしなんらかの意味をなすかのように配置されていた。
「この蝋燭はいったい?こんなに中は明るいのに。」
「あなたには言えないわ。」
「ふん・・なんだよ急に。さっきはあんなに・・」
「あれはプライベートよ。」
「よくいうよ。」
綾乃さんは僕の横に回ると、あさっての方向を向いていった。
「古典的な罠よ。弱体の陣。さっきのお礼でおしえてあげるわ。これ以上は許して。歯止めがきかなくなっちゃうの。」
仲間の命も預かってるんだもんな。
追求するのはよそう。
「・・あの子、必死になって探してるでしょうね。」
「だろうね。遅かれ早かれ、かぎつけるよ。あいつをしつけたのは、僕だからね。」
「知ってる。さきにこっちから呼び出す。」
ドラム缶のそばには、守るように女子高校生が立っている。
綾乃さん以外は皆同じ、ミッション系の制服だ。
いったいどこの高校から徴兵してきたんだろう。
それぞれ、細身の剣と拳銃を持って、周囲に目を光らせている。
眠そうにしたり、近くの子と昨晩のテレビ番組の話をしてるのもいるけど。
「あらっ、逢瀬さん?」
僕は綾乃さんに目を戻した。
綾乃さんは、無表情に携帯をもっている。
「あなたの彼氏、あずかってるわ。岩野巻港の西川島第8倉庫にいらっしゃい。明日の日の出と同時に彼氏を殺すわ。急いでここにくるのよ。いいわね。」
綾乃さんは一方的に告げると携帯を切った。
僕をみると、かすかに微笑んだ。
岩野巻までつれてこられたのか。
僕の部屋から軽く50kmは離れてる。
ミーナはここを見つけ出せるだろうか?
もし見つけられなくても、綾乃さんはミーナをここにおびき寄せるだろう。
だって、綾乃さんのターゲットはミーナなのだから。
「気長にまちましょう。いずれくるはずよ。」
僕らは倉庫の中心に移動して、ミーナを待つ。
二時間後、正面の電動シャッターが上がった。
ウィーン・・
「きたわね。」
綾乃さんの声に、少女たちが一斉に拳銃をシャッターに向けた。
『ミナ、これは罠だ。敵は何かたくらんでる。』
僕は、綾乃さんに悟られないように、服の上からペンダントを触る。
しかし返事はない。
ミーナが変身したときの、ペンダントのぬくもりもない。
シャッターと床のすきまに形のいい生足が見えた。
さらにシャッターが上がると、淫魔猟兵がその姿を現す。
「返してよ、あたしのタカラモノ。」
「あなたのタカラモノは、私にとってもタカラモノなの。ここで、どっちが持ち主になるか決めようじゃない。」
ミーナは綾乃さんの告白に、驚いている様子だ。
「いくわよ??変身!ラブ・アンド・ビューティー・エスカレーション!!」
綾乃さんが青白い光に包まれ、物凄い光を放つ!
僕は目をつぶった。
「愛と美と正義の戦士!!ラブリーナイト参上!!」
凛とした声が、空気を震わせた。
目を開いた瞬間、僕のそばに美少女戦士が立っていた。
ううっ・・
”結婚して”と懇願されたことが、脳裏をかすめた。
橙色のミニスカートが隠す、美しい生足。
胸も腰も太ももも肉付きがよく、愛を感じてしまう。
萌える・・
あ、いかん!
エッチな視線を感じてラブリーナイトが僕のほうを向いた!
「はぁっ・・秀平君・・嬉しい・・また私のこと愛してくれてるのね。」
うっとりした様子で僕を見つめるラブリーナイト。
と、目の前が光った!
僕の胸から光の玉がぽこ、ぽこっと生まれては消えていく!
なんだ、いったい!?
「こ、これは・・」
「君の想いよ。ぜんぶ、私の力になるの。あなたが眠っている間に、あなたの愛情を吸収する魔法をかけておいたの。」
はぁーっ、肉人形として散々精子を抜かれ、愛情まで抜かれてしまうのかっ!!
なんて抜け目のない子なんだ!!
ラブリーナイトはセミロングの髪をかきあげ、僕にウィンクした。
「私と結婚して♪秀平くん、さっきのこと思い出して♪」
ドキドキっ!
り、利用されてるとはいえ、たまらん!!
ラブリーナイトの誘惑にまんまとはまってしまう僕。
僕の頭の中は、M字開脚のラブリーナイトのスカートをめくりあげて、子宮内射精をしまくるイメージでいっぱいになった。
愛してる愛してる愛してる!!
あやのさーーーん!!
ぽこぽこぽこ!
連続で僕の目の前に光の玉が生まれて、消滅する。
僕は数歩前に歩みでると、我慢できなくてラブリーナイトを抱きしめて、ディープキスを繰り返す。
「はぁ・・はぁ・・」
数十秒、ラブリーナイトの体に夢中になっておっぱいから背中、太ももまでもみまくる。
舌と舌は、激しく絡み合い、つつきあい、愛し合う。
はぁぁぁ・・気持ちいい〜〜
もっとラブリーナイトの体が欲しくて、強く抱き寄せようとする。
しかし、力が入らない。
それどころか、いつの間にか立っているのがつらくなってる!?
膝が笑いはじめた。
これは・・また・・相当抜かれたぞ・・
「はぁ、はぁ、綾乃さん・・」
ラブリーナイトはにこっと笑って僕から離れた。
「ありがとう。君の気持ち、全部受け取ってあげたから。・・・さぁ、行くわよ!淫魔猟兵!!」
ラブリーナイトがミーナのほうに手をかざすと、手元に白く輝く長剣が現れた。
彼女はそれを握り、切っ先をミーナに向けた。
「恋する乙女の力、とくと御覧なさい!レイジング・トルネード!!」
剣の切っ先から白い渦巻きが起こり、勢力を増してミーナのほうへ向かっていく。
あっという間に渦巻きはミーナを飲み込んだ!
「きゃーーっ!!」
ミーナは悲鳴とともに空中に巻き上げられ、天井にたたきつけられる。
「ああっ!!」
またミーナの悲鳴。
今のは、もろに食らったぞ!?
『ミ、ミナ!?』
返事がない。
ミーナは落下と同時に体勢をたて直すと、上空から三発の魔法弾を放った!
ん?魔法弾?
あんな技はみたことないぞ。
「そんな遅い攻撃っ。」
ラブリーナイトは深呼吸すると、目をつぶった。
魔法弾は、上と左右に分かれてこっちに飛んでくる。
どんどん加速して、高速道路を暴走する自動車のようなスピードになった。
ラブリーナイトに当たる・・
命中する瞬間、彼女は流れるような太刀筋で三発の魔法弾を切り払った。
剣に触れた途端、消滅する魔法弾。
ラブリーナイトはひらりと飛び上がると、着地したばかりの淫魔猟兵に切りかかった。
淫魔猟兵はラブリーナイトの剣をなんとか受け止めるが、よこっぱらに思いっきりケリを入れられる。
吹き飛び、壁にたたきつけられる淫魔猟兵。
彼女は四つんばいになり、呼吸を荒くする。
『ミナ!!』
なぜだ、返事がない!?
ラブリーナイトは、四つんばいのミーナのそばに悠然と立っている。
「どうやら、勝負あったようね。淫魔猟兵さん。私だって強くなれるのよ。それに、今回は頭を使ったの。御覧なさい。あの蝋燭と私の仲間。皆の祈りが、あなたの力を弱めるのよ。」
白い剣が、ミーナの首に当たる。
「負けを認めなさい。」
「くっ・・・」
ミーナは、歯を食いしばった。
ミーナだけじゃない。
僕も完全に負けた。
またしても作戦負けだ。
司令官が作戦負けなのだから、兵士が勝てるわけがない。
「あなたが死ねば、秀平くんが悲しむわ。彼のこと、悲しませたくないでしょ?」
「ううっ・・」
「私が秀平くんの一号、あなたは二号になるの。」
ミーナは、悔しくてたまらない表情を浮かべた。
ラブリーナイトは振り返って、僕のほうを見た。
なぜか優しい微笑み。
勝者の余裕というやつか。
「これで今晩の戦いは終わり。これまでよ。」
言い終わると、哀れみのまなざしを淫魔猟兵に投げかける。
周囲の女の子たちが集まってきて、ミーナを静かに立たせる。
一人の子が、ミーナからペンダントを取り上げた。
ミーナは抵抗しない。
今の戦いで、勝てないことが分かったんだ・・
光る粉が彼女の周囲に舞い散り、強制的に変身が解かれる。
ああ・・いまので淫魔猟兵は倒されてしまったんだ。
あのペンダントがなければ、ミーナは一匹のサキュバスでしかない。
肩から力が抜けた。
しかし、これ以上悪い結果にならずに済んだ。
これからもきっと、ミーナと一緒に生きていける。
ずっとそばで生きていける。
綾乃さんはそれを許してくれる人だ。
僕は空気の塊を一気に吐き出した。
がさっ。
途端、背後に禍々しい殺気を感じた。
なんだ!?
体がかたくなって、後ろを振り向けない。
「いいえ、戦いは終わりません。綾乃。あなたはそのサキュバスを殺さなくてはなりません。」
背後から若い男の声。
女の子たちの視線がこっちに集中する。
「大司教様・・そんなことをすれば、秀平くんは我々を憎みます。永遠に協力は得られません。」
ラブリーナイトは眉をひそめて答えた。
「心配ありません。私が力でこの子供をねじ伏せ、つかってみせます。」
「そんな。彼は我々の仲間になる人です。」
「ごたくはいい!早くそのサキュバスを殺せ!!」
男はいやにかすれた声で怒鳴った。
「その淫魔は、おまえたちが思っている以上に危険な存在なんだっ!!」
「大司教様、お願いです、どうかお怒りをお鎮めくださいませ。」
女の子のひとりがおびえるように懇願する。
「綾乃。そのサキュバスを殺すんだ。跡形もなくこの世から消し去れ。」
「・・・」
ラブリーナイトは目をそむけた。
「わかった。では、これなら?殺さぬわけにはいかんだろう。」
僕の頭の後ろで、カチャッと音がする。
はっとしたようにラブリーナイトは僕を見る。
一瞬で顔が青ざめた。
「やめてください!そんなこと!ひどいっ!」
ラブリーナイトは叫んだ。
「私は今すぐにでも、お前の未来を奪うことができる。理解したか。」
「・・・・せっかく知り合えたのに・・」
ラブリーナイトの声が震えた。
「そうだ。せっかく知り合えたのだから、この男を大事にしてやったらどうだ。さあ、はやくそいつを殺すんだ。」
「大司教様、ファタリスが・・怒っているわ。」
「かまわん。」
「ファタリスは、あなたの仲間でしょう?こんなに・・・こんなに怒ってるのに、耳をかさないの?」
「くどいぞ、綾乃。そんなに引き金を引いて欲しいのか?私は躊躇しない。わかっているはずだ。」
「やめて!!!!!お願い、どうかそれだけは・・その人を傷つけないで!!」
「はははっ、もはやこの小僧なしでは、おまえは生きていけないのだ。」
「わかりました、大司教様の言うとおりにします。・・ごめんなさい、逢瀬さん。秀平くんを守るには、こうするしかないの。分かってくれるわよね・・」
私服姿のミーナ。
ペンダントもなく、両側から少女たちに押さえつけられている。
ラブリーナイトは、剣を高々と振り上げた。
僕はその姿に、ミーナと見たあの記録映像を思い出した。
次に起こることを想像し、冷や汗がふき出た。
ミーナはすべてを諦めたように俯いている。
「ミナを殺すな!!」
僕は、後ろ姿を見せるラブリーナイトに叫ぶ。
渾身の力を込めて動こうとするが、かなわない。
見えない力で金縛りになっているのだ。
「やめて!!やめてよ・・」
綾乃さんの声。
その声は、震えていた。
「私、こんなつもりじゃなかったのよ・・・許して。ごめんね、逢瀬さん。さようなら淫魔猟兵。秀平くんは、私が責任をもって幸せにするから・・」
「早く殺せ!!」
ラブリーナイトはびくりとすると、おそるおそる剣を高くかかげた。
僕は目を閉じた。
こんなこと、ありえない。
きっと夢なんだ。
悪い夢なんだ・・
息を吸い込む。
すべてが静かになった。
神様、この夢を早く終わらせてください。
お願いです。
いまさら神様もないか。
僕は悪魔を愛したんだからな・・
でも。
でも、こんなのって・・
キューン!!
静寂を破る銃声。
僕は目を開いた。
「ぐあっ!?なんだっ!!」
男のうめき声。
僕の体のしびれが消えた。
僕は振り向いた。
若く痩せた長髪の男。
牧師のような黒いコートをまとっていた。
繊細な少年を思わせる風貌には、どこか影がある。
男は腕を押さえ、僕を睨んだ。
少し後ろには、拳銃が転がっていた。
「くっ、術が切れたか!」
男は吼えた。
僕は後ずさった。
「逃がすか!」
男が叫ぶと同時に、また銃声。
ドス、ドスッと男の胴に穴があき、緑の血が吹き出た。
「くぬっ!!ぐあっ!!誰だ!」
男は苦しそうに胸に手をあてた。
「なんだ、なぜだ!なぜ鉛弾が私の結界を破れるっ!!」
僕と男の間に、はらりと何かが降ってきた。
僕がその姿を認める前に、それは次の弾を撃った。
ドーンという腹に響く発射音とともに、男の右腕が吹き飛んだ。
滝のように肩からあふれ出る緑色の液体。
「ぎぁあああああ!!」
男の足元に、体液の水溜りができた。
ガッチャン。
空薬莢を排出し、次の散弾を装填する音。
空薬莢が床に転がる。
銃が火を噴く。
ドーン!
男の左腕が吹き飛んだ。
「たいした化け物。まだ意識があるみたいだけど。おまえ、どこからきた?」
限りない自信に満ちた女の声。
女がもっているのは、アメリカ製の自動小銃M4。
そのバレルの下にはショットガンが装着されている。
ショットガンはレミントンモデル870。
この武器は・・
先週僕がミナに持たせたばかりのもの・・
銃弾に魔法がかけられており、たいていの結界は貫通する。
ミーナと僕で一緒に考えて作ったんだ。
M4の銃床が男の顔にたたきつけられた。
鈍い打撃音とともに、男の歯がばらりと床にこぼれた。
「せっかくのイケメンっぷりが台無し。ふふふっ。もう一回。」
強力な一撃が、男の顔を上から打ちのめした。
床にたたきつけられる男。
「ぐひっ・・いででで・・」
「バカ。」
女のブーツが、両手のない男の顔を踏み潰す。
「生命力だけ無駄にあるね。人間なら、軽く4回は死んでるのに。」
「み、ミナ・・ミナが二人・・?」
僕の声に彼女は振りかえる。
口元で微笑んでみせた。
ほんの少しの時間僕と目を合わせると、再び両手のない人間を見下ろした。
「ぎ、ぎっ・・」
男はいたるところから緑色の血を垂れ流し、悶える。
「言え。おまえは誰?どこから来た?」
「あ、足を、離し・・やがれ・・」
「あら失礼。」
淫魔猟兵は頭をふんずけていた足を外してやる。
「俺は・・ギシャーム・・、ミルバの、かつての部下さ・・」
男がもぞもぞと悶えると、肩から無数の大小の触手が生え腕を形作っていく。
みるみるうちに男の両手は復活した。
「・・呆れちゃう生命力ね・・」
男は起き上がった。
折れた歯や、あざのできた頬も元通りになっていた。
すさまじい回復力だ。
しかし、はじめてみたときのような穏やかさはすでにない。
「俺はギシャーム・アズレット・ウグル。オターランドじゃ、ウグルの術魔軍団を指揮して何万という人間を血祭りにあげた!その、ギシャーム様さ!!」
「術魔はオターランドのいくさで壊滅したはず。なぜこの世界にいる?」
「ミルバの軍団のふがいなさを見たんだよ。毒の霧にやられる淫魔どもについてちゃ勝てねぇって思ってな。」
「分かった。オターランドからこの世界へ、ゲートを使って渡ってきたんだね。」
「そういうことよ!しかもだ、この世界にはいい素体が溢れていやがる。やりようによっちゃあ女神騎士も真っ青な兵士できる最高の世界さ!」
「なるほど。ラブリーナイトは・・おまえが作った兵士か・・」
「貴様さえいなければ、ミルバの一味など敵ではないわ!」
「おろかなことを。・・おまえのようなヤツが他にもいるのか!?」
「おっと。いい質問だが答えるわけにはいかねえな。それより、俺はいそがしいんだ、こんなとこで油を売ってるわけにはいかねえ。・・漆黒の扉!!」
男が叫ぶと、彼のすぐそばにドア型の影が炎を伴って現れた。
「あばよっ。」
「待て!!」
ミーナが叫ぶやいなや、男はドアに飛び込む。
が、ドアの反対側から出てきてしまう。
「な、なんだこりゃ?俺様の術が・・」
「ギシャーム!あなたはここから逃げ出せないわ!!」
ラブリーナイトの声に、僕とミーナが同時に振り向く。
いつのまにか少女たちは蝋燭のそばで配置についていた。
それぞれに跪いて祈りをささげている。
こちらへ歩いてくるラブリーナイトの目に、僕は怒りの炎を見た。
「あなたのような外道者は、絶対に許さない!!」
「小娘が!口をつつしまんか!」
「私たちを散々だまして、いいように使って・・絶対に・・絶対に許さない!」
「騙されるお前らが悪いっての!」
ギシャームは両手のひらをラブリーナイトへ向けて、魔法を放とうとする。
だが、ばしっと火花が手のひらから出ただけ。
それだけで終わってしまう。
「なんだこれは!?魔力はまだあるのに?いったい、どうしたのだ?」
「愚かね、ギシャーム。あなたは自分で考えた作戦を忘れてしまったの?皆の祈りが、あなたの力を封じているのよ。」
「なにっ・・!そうか・・ちぃっ・・くそっ、こともあろうに総大将の俺様に向かって弱体の陣を使うとはな!」
悔しそうに口元を歪める。
「ならばこの手でしとめるまでだ!」
彼は両手を腰に添える。
すっと手を離すと、複雑な切っ先をもつ異界の長槍が彼の目の前に現れる。
それを握ろうとした瞬間。
空気を切り裂く刃の一閃。
「ぐあっ・・」
淫魔猟兵の大鎌が、彼の両手首を切断したのだ。
転がる両手。
再び噴出す緑色の体液。
「い、いてぇっ。」
「すぐ楽にしてあげる!くらえっ!ディバイン・・・ジャッジメント!!!」
すかさずラブリーナイトが叫ぶ。
ラブリーナイトは一筋の細い光に変わって、ギシャームの胸を突き抜ける。
一瞬で、彼の後ろに現れる。
「ううっ・・!?」
がっくり床にひざをつくギシャーム。
どっと白い炎がギシャームを覆いつくしたかと思うと、不浄な存在は白き灰へ変わった。残された者たちを静寂が包む。
ラブリーナイトは振り返って、ギシャームの灰を確認した。
二人の淫魔猟兵と秀平は、いつの間にかその場から消えていた。
「騙されるほうが悪い、か・・ギシャームにも、淫魔猟兵にも騙されちゃったわ。」
自分たちが捕縛した淫魔猟兵は、完全なダミーだったのだ。
あのペンダントも。
「ラブリーナイト様、私たちはこれから、あなたのご指示に従います。これからは、あなたが私たちの主です。」
綾乃のまわりを取り巻く少女たち。
「みんな・・」
綾乃はほっとしたような笑みを浮かべた。
「戦いはまだ1ページ目、ラブリーナイト様、これからが本当の戦いです!」
「そう・・そうよ。」
綾乃は自分に言い聞かせるように頷いた。
この戦いに身を投じている限り、秀平と会う機会もある。
秀平を逃がしたのは残念だったが、今の綾乃の胸には、仲間の言葉が嬉しかった。
そんな彼女の頬を、あたたかいしずくが伝った。
そろそろ日付も変わろうかという頃。
僕とミーナは、茶の間で静かなひと時を過ごしていた。
さっきまではリサさんもいたんだ。
リサさんは、僕のボディーガードとしてこれから近所にすむことになる。
ほっとした。
近くにいてくれるようでいない人だから、これはいい契機となるだろう。
さらに3名の淫魔も僕らの身辺警護につくそうだ。
あんな人質事件が頻発するようじゃ、僕の命は風前の灯火だからな。
これで僕たち二人は、安心して生活できるってわけだ。
「おかしかったね、三人束になって負けちゃうなんて。」
「呼吸をあわせるのが難しかったとか?」
偽の淫魔猟兵を演じたのは、ミルバの姉と妹の三人。
魔術とはいえ、三人が一人になるのだから驚いたものだ。
さらに、淫魔三人分をまとめて倒したラブリーナイトの力。
強化されているとはいえ・・すさまじい力だ。
「ミナ、そういえばラブリーナイト、サキュバスにされちゃったんだ。」
あと・・僕の携帯が盗られた。
勝手に使われると困るが、ここは黙っておく。
話がでかくなりそうだから。
「えっ、何寝ぼけたこといってるのよ。」
「ほんとだよ、あの偽イケメンにサキュバスにされちゃったんだ。」
「なんで?」
「ギシャームに強化の魔法かけられて強くなったんだけど、副作用か何かでサキュバスになっちゃったんだ。」
「ギシャームがかけたの?」
「そう。」
「じゃあ、いまごろ元の体に戻ってるんじゃない?残念ねぇ。」
「どうして戻るんだ?」
「だって、魔法をかけたやつが死んじゃったもん。」
「死ぬと戻るものなのか?」
「もちろん戻らないのもあるわ。武器にかける魔法とか強力なのろいとかね。」
「心配だな、戻ってるといいなあ・・」
「敵を心配してるんだ、ひでっちはやさしーなー。」
ミーナは目と声で抗議する。。
「ほら、そう怒るなよ。」
僕は、ソファに座ったミーナの太ももに触れた。
ミニスカートの裾から飛び出している形のいい生足は、あたたかい。
なでまくって、綾乃さんへの愛情を見抜かれないようにする。
ミーナは勘が鋭いからな。
「困ってたらアイツ、ひでっちに会いに来るよ。」
「そうかもな。」
「アイツ、ひでっちのこと頼りにしてる。そんな気がするの。」
「敵の僕を?」
「ひでっちは好みの女の子には甘いから。」
「ひどい言われようッスネ。」
「褒めてるんじゃない、優しいって。・・ねぇ、でも、できたらあたしだけに優しくして欲しいな。」
ミーナは僕に寄り添ってくる。
僕の左腕を捕まえて頬をくっつける。
「これからも守り抜いてみせるわ。そして、このペットを飼いならしてみせる。」
「ははっ、難しいぞ。」
「ラブリーナイトなんかより、こっちのほうがずっと手ごわいわ。いくらイかせても堕ちないんだもん。」
「もう堕ちてるよ。」
「もっともっと。こんなもんじゃないわ。あたしのシモベにしたいのよ。」
「作戦を考えることだね。」
「もちろんよ。いやらしい射精奴隷に調教しちゃうんだから。」
「そのためにはまず、今日はじっくり休むことだな。」
「うふふっ、そうね。」
綾乃さんに精力をヌかれたせいか、僕はベットに入るとすぐねむりについた。
翌朝。
「ひでっち、こんなの郵便受けに入ってたよ?」
ミナが僕の枕元にもってきたのは、僕の携帯だった。
起きたばかり、眠い目を擦りながら携帯を握る僕。
「ひでっちのじゃない?それ。」
確かに、僕のだ。
「親切な人が落とし物を届けてくれたんだね!」
ミナはそういって微笑むと寝室から出ていった。
携帯を開いてみる。
・・・待ちうけ画面が変わってる。
こちらに向かってお色気ポーズをとる綾乃さん画像。
寝そべったまま固まる僕。
メールの受信トレイを開く。
卑猥な件名の羅列。
『いれさせて』
『ひでくんとしたい』
『ぬれちゃってたいへんなの』
『したいです』
『だいて』
『うまい かゆ』
『からだめあてでもいいです』
『スキンかっておいたよ』
『ズコズコしたいの』
『オナって採れた愛液送るね』
山積みの未読ラブラブメール。
綾乃さんからだ・・・
頬を冷たい汗が伝った。
・・まだサキュバスのままっぽい。
冬の太陽が窓から差し込むさわやかな朝。
僕は携帯電話を握ったまま固まり続けた。
[おしまい♪]
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