『淫魔猟兵対美少女戦士』
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本SS（短編小説）は、2005年から2015年ごろまでWisper様に掲載されていた作品です。
＜４＞
土曜日の昼下がり、僕とミーナは隣町にいた。
駅から出ると、すぐ目の前に6階建ての大店舗があった。
これが今回の目的地。
『ショッピングモール・デビルズデン』。
店の入口にくると、週末ということもあってか、若いカップルが多く目についた。
皆、とても親密な様子。
かく言う僕も、しっかりミーナの手を握っている。
彼女は黒のジャケットに、ジーンズ姿。
意外だが、こういう男っぽい服装もよく似合う。
「ここの女の子はみーんな、淫魔だよ。」
彼女はそっとささやいた。
そう。
このショッピングセンターは、淫魔が経営する淫魔のためのお店なのだ。
『人民の人民による人民のための・・』と演説したリンカーンもびっくりである。
淫魔同士が会合を開いたり、情報交換を行ったりするのに便利な場所なんだ。
カップルのうち、女のほうはまず間違いなく淫魔。
男のほうは、淫魔に喰われた餌食。
僕も、その餌食のうちの一人。
淫魔ミーナが化けた、理想の女性『逢瀬美奈』に心も体もむさぼられてしまったのだ。
僕は、ほっとため息をついて、店舗に足を踏み入れる。
50センチ前を歩いている男女が互いに頬擦りを始めた。
それを見てか、ミーナがきゅっとくっついてくる。
僕の右肩に頬を摺り寄せる。
「へんだなぁ、今朝シたばっかりなのに。また欲しくなっちゃったよ〜。」
彼女は甘えた声を出す。
「今日は用事があってここへ来たんだぜ。用事終わってからにしようよ。それとも、どうしても欲しいの？」
「どうしてもじゃなくて、なんとなくだよ。」
「じゃあ、我慢しとき。うちに帰ったら遊ぼうぜ。」
「ひでっち、いっぱいするって、約束してね。」
別に頼んでもいないのに、昨日から”ひでっち”と呼ばれてしまっている。
どうせ呼ぶなら、カルロビッツ暗黒大帝閣下とか魔界大公爵様と呼んで欲しいのだが。
「いつも、”いっぱい”しかしないだろ？」
「エヘヘ、そうだよね、あたしたち恋人同士だもんね。」
僕は彼女の愛らしい笑顔に惚れ直した。
エレベーターはすぐに見つかった。
僕たちはエレベーターのボタンを押し、降りてくるまでしばし待つ。
「何階だったかしら・・一度だけ、行ったことあるんだけど・・」
「お、おいおい、まさか忘れたの？知ってるから任せとけっていってたじゃん。」
「お店に入ったら、急に自信なくなっちゃったの。」
「待ち合わせ時間まであと5分だぜ。思い出してくれよ。」
「うーん！確か、4階だったかな？お店の名前は、”おっぱい・エッチなミルクティー”だったような。」
ろくでもない名前の軽食店だな。
乳フェチが経営しているのか？
「それ、多分、店の名前違うと思うよ。」
「あたしも、名前は自信ない。」
自信ないってか、ぶっちゃけありえないっしょ。
名前、絶対いかがわしすぎるって。
エレベータのドアが開く。
誰もいなかった。
中に入った僕は、とりあえず”4”のボタンを押す。
「普通のショッピングセンターみたいだけど、かえってそれが怖いな。」
「何が怖いのよ。そばに一匹、淫魔をはべらせてるくせに。」
「こいつは淫魔じゃない。恋人。」
彼女は嬉しそうにヘヘヘと笑った。
夢の中でこそ淫魔らしく僕をいためつけるが、現実では文句なしに僕の理想の女性だ。
気を許すと、思わず『美奈』と呼んでしまう。
淫魔であることを忘れてしまう。
キンコーン。
4階につくとチャイムがなって、ドアが開く。
ドアの向こう側では3組のカップルが待っていた。
僕らは入れ違いでエレベーターから出た。
エレベータのドアが閉まる。
「あはっ、すごいわ、男の子からすっごい濃い淫魔のにおいがしたわ。」
「特に気づかなかったけど。」
「人間には分からないわ。」
「そんなにすごかったのか。」
「きっと、起きてる間中ずっと・・」
「まぁまぁ、人のことは気にせずに。メシ屋にいこうぜ？」
ミーナは、親密なカップルを見ると発情してしまうようだ。
危ない危ない。
僕らは待ち合わせ場所の軽食店を探す。
ヒントは”おっぱい・エッチなミルクティー”。
3分ほどフロア内をうろついて、それらしい店が見つかった。
”りっぱでりっちなローズティー”。
ミーナが常日頃何を考えているか、よく分かった。
頭じゃなくて、子宮でモノを考えてるな、こいつは・・
「えへ、ちょっと名前、違ってたね。」
「あんな名前だったら、皆ドキドキしちゃうよ。」
「あたしもちょっぴり興奮しちゃうかな。」
こぎれいな店内に入る。
見回すと、奥まったところに見知らぬ男女と一緒にリサさんが座っていた。
僕とミーナが、今日ここへきた目的。
それは、試作版の変身ペンダントを受け取り、開発者から詳細な説明を受けること。
僕はおじぎをして、席についた。
「二人とも、元気そうね。」
リサさんは黒のロングスカートにGジャン。
「君が、秀平くんだね。」
男は背広姿で眼鏡をかけている。
僕よりずっと年上だ。
20代後半か30才くらいだろうか。
男は続けた。
「私は、大東寺三郎佐衛門（だいとうじさぶろうざえもん）。専門は応用超常物理だ。今は技術開発部の主任として働いている。」
技術開発部？
淫魔たちの組織の、だろうか。
「わたしは、カーナ。リサやミーナのいとこよ。ま、いとこといっても、年は離れてるけどね。わたし、大東寺博士のアシスタントなの。ま、平たく言えば、兵器開発部門の研究員ってところかしらね。」
スーツを着込んだポニーテールのカーナさんは、秘書のような雰囲気だった。
大東寺さんとカーナさんは、同じくらいの年で、どちらも知的な色男・色女だ。
「僕、秀平です。身の安全のため、苗字は省略させて頂きます。」
「若いのに、だいぶしっかりしてるみたいだな。さすがは淫魔猟兵のパートナーだ。」
大東寺さんは笑った。
「淫魔猟兵変身システムは、おもちゃじゃない。殺しのための道具、戦いのためのシステムだ。ミナちゃんも、秀平くんも、そういう気持ちで聞いてくれ。」
「待って。僕は、ミーナに人殺しさせるって話はきいてないよ。」
「私もしてないつもりだ。私としては、データ収集をお願いするつもりでいる。誰も殺す必要はない。」
「そうですか、ならいいんです。ちょっと早合点しました。」
「でも、これは危険な品物だということは忘れないで欲しい。下手に扱えば、君もミーナちゃんも怪我をする。」
「それは・・分かってるつもりです。」
「ではカーナ、資料を。」
カーナさんは黒皮のバックからA4の厚い資料を二部取り出し、僕とミーナに渡す。
「これはちょー極秘資料なの。この説明会が終わったらすぐ返してもらうからよく読んでね。」
そうだよな。秘密兵器の説明書きだもんな。
30分ほど、その資料に目を通した。
説明会とはいっても、カーナさんも大東寺さんも、内容については説明しない。
ただ、周囲を絶えず警戒しているだけだ。
身内の淫魔たちにすら、見せたくないものらしい。
その雰囲気を察してか、お客は入り口付近の席にばかり座る。
ときおり、カーナさんが入り口のほうを見た。
アイコンタクトで『来るな』と言っているのかもしれない。
淫魔といっても、これだけ秩序だった社会を築いているのだ。
本気を出せば、国のひとつや二つ、簡単に傾くかもしれない。
「ま、分かりやすく書いたつもりだけど。」
と、カーナさん。
「ええ。僕が考えたものに似てますね。」
大筋では、僕が提案した構想そのままだった。
僕の構想と違っていたのは、”状況に適応する手段”だった。
僕は、予め用意しておいたカードを使い分けて、装備や能力を変化させればいいと思っていた。
だがこれは、カードリーダーにカードを読み込ませるとき、すきができるということで没になっている。
その代わり、音声認識対応になって、淫魔猟兵が武器や術の名前を言えば、自動的に発動（発情ではない）する仕組みが実装された。
また、僕とミーナの意思疎通を円滑とするため、『通話水晶』なるものが実装された。
親指ほどのこの水晶は、マイクとイヤホンの機能を果たす。
この水晶を僕とミーナが身に付けることで、半径10ｋｍ以内の対話が可能となる。
特に、言葉が、音ではなく”心の声”（”魂の叫び”？）として伝えられるため、会話が敵に察知されにくい。
水晶は、彼女のコスチュームの胸のリボンの中心に縫いつけられている。
僕の場合は、この水晶をペンダントとして身につけることになる。
ミーナが変身したときのみ、回線が活きて使用できる。
そして肝心の、淫魔猟兵の戦闘能力だが。
セーラー服風コスチュームの見た目とは裏腹の、歩く戦闘車両並の破壊力だった。
20ｍｍの均質鋼板をぶち抜くパンチ力。
23.4ｍｍ機関砲の直撃をものともしない不可視装甲。
夜間でも2.5ｋｍ先まで見通すことができる暗視能力。
細菌・生物兵器や核兵器の放射能に耐えるNBC防護能力。
魔法についても、淫魔が考えつく限りの攻撃力と防御力を盛り込んであるようだ。
しかし、なにせ僕には魔術の素養はない。
いくら日本語で詳しくかかれても、分からないのだ。
「魔法のところだけは、よく分かりませんね。」
僕はため息をついた。
「あは、あたし、そっちはぜーんぶ分かったよ♪」
ミーナは得意げにいう。
「そっか。じゃあ、魔法はミーナに任せるよ。それ以外は、僕が担当できるな。」
「うん！」
ミーナは元気よく返事した。
「質問が何かあれば、聞いてみてくれ。」
と、大東寺さん。
「ひとつ教えてください。最初にデータ収集って言ってたけど、どんな類のものなんですか。」
「武器の威力や防御力、変身後の強化の具合を演習を通じて調べてもらうつもりでいる。」
「秀平くんは知らないと思うけど、”泥人形”という術があるの。これを使うと、剣術や魔術の訓練に使う動く的が作れるのよ。」
「あたかも人間のような動きをする、土の人形だ。人間の社会でゴーレムと呼ばれるものに似ている。」
「それなら安全そうですね。よかった。安心しました。」
「いくら悪魔だって、いとこを危険な目になんかあわせないわよ。ね、リサ。」
「ええ。いい落しどころに落ち着いてよかったわ。ミーナも適度に暴れられるしね。」
ミーナはにこにこする。
「大東寺博士。ラブリーナイトのことを考えれば、早めにデータを収集して、実戦レベルまで持っていく必要がありますね。」
「よく分かってるね。データ収集については、直接会って指示を出すつもりだ。悪いが協力してもらうよ。」
「ええ。」
「君の意見を尊重したいと思ってる。報告書を書いてもらうが、好きなことを書いていいんだ。どうすればより強くできるか。十分考えながら手伝って欲しい。」
「はい。ご期待にそえるよう、頑張ります。」
とはいったものの・・
あのラブリーナイトという可憐な少女を、苦しめることになるかもしれないのだ。
多少、気が進まない部分は残る。
だが、僕が何もしなければ、淫魔がラブリーナイトに殺される。
いずれ、ミーナも殺されるだろう。
ラブリーナイトも、ミーナも、傷つかずに済む根本的な解決策はないのだろうか？
「秀平くん。そんなに難しく考えなくていいのよ。博士は君の自由な発想が欲しいの。ま、君の言葉で自由に書いてくれればいいわ。書き直し！なーんて言わないから。」
他には特段聞きたいことはなかった。
説明会の最後、僕には通話水晶、ミーナには変身ペンダントが渡された。
「これがあれば、何があっても、ひでっちを守れるね・・」
「まぁ、頼もしいわね。前回渡してもらったときに、エネルギーが溜まってたから、そのままの状態にしてあるわ。すぐ変身できるわよ。」
と、カーナさん。
「わーーい♪」
大喜びのミーナ。
僕たち5人は軽食店を出た。
大東寺さんとカーナさんは、別な場所で待ち合わせがあって、僕らと別れた。
僕ら3人は3階の衣料品売り場で、買い物をすることになった。
ミーナもリサさんも、とても楽しそうだ。
「あたし、自分で着たい服と、ひでっちに見せたい服と、ひでっちに着せたい服があるのよね。これなんか、自分で着たいなぁー。」
渋い皮のジャケットだ。
意外と男モノっぽいのが好きなんだな。
「そんなに買ったらもって帰るのが大変だぜ。今言った二番目の服だけ買って帰ろうかね。」
「あーん！あたし、お人形さんじゃないよぉ。」
「へっへっへっへ。可愛いお人形さんだよ。えっへっへ・・」
「秀平くん、ほどほどにしないと体壊すわよ。」
「え、そりゃあ、大丈夫ですよ。節度のある暮らししてますからね。」
「何が節度だよ。見境ないくせに。昨日だってさぁ・・」
「わっ、分かった分かった、僕が悪かったよ。」
「あなたたち、もう、楽しいわねぇ。ふふふ。」
そういえば、リサさんって、一人だな。
淫魔なんだから、男の一人や二人、侍らせていてもおかしくない。
ここの女たちなんか、アクセサリーみたいに男を連れている。
リサさんはどうして一人なんだろう！？
「あ、これこれ！すっごくいい！」
ミーナはカーキ色のトレンチコートを手に取った。
「これは、これとあうね・・あ、あたしちょっと着替えしてくるね？」
ミーナはズボンやトレンチコートを持って、試着室に行ってしまった。
リサさんは、ミーナの背中を見送ったあと、少し黙り込んだ。
「いつもあのとおりだから・・ごめんなさいね、迷惑かけて。」
「いえ、迷惑だなんて。今はとっても幸せです。」
「人間よりも、あの子を選びたい？」
リサさんの言葉は、核心を突いていた。
「どちらかと言われれば、選ぶでしょうね。もう、家族以上の存在ですから。」
「まだ会って一週間よ。」
「時間なんて、関係ありません。」
「ふふふ、うらやましいわね。」
「うらやましいだなんて、リサさんだって、男の人・・」
僕が言いかけたときだった。
ジリリリリリ！！
けたたましい音が鳴り響いた。
火災警報器の音だ！
「か・・火事か！？」
「違う！敵襲よ！」
敵襲！？
周囲の女たちが、にわかに殺気立つ。
店員も客も、使えそうなものを手にとり武器にする。
レジのほうから、女の怒鳴り声が聞こえる。
「いいかいおまえたち！二手に分かれるんだ、片方は男たちを安全に誘導する。もう片方は侵入者を血祭りにあげるのだ！戦いに自信のあるものは、皆私に続け！敵を殺し尽くすのだ！」
部屋全体を振るわせる、ときの声があがった。
先ほどまでとなりでスカートを見ていた男女が、リサさんに歩みよってくる。
「私は、男の子を逃がす役に回るわ。あんたは？」
「私もそっち。この人は妹の恋人だから、絶対に守らないと。」
リサさんは僕をみた。
「早くミーナを連れてこないと。」
僕がそう言った途端、リサさんはがっちりと僕の手をつかんだ。
「勝手な行動はしないで。まず群れを作るのが、私たちの戦い方の鉄則よ。」
そういって、手を離す。
リサさんから目を離すと、すでに幾人もの男女が僕らを囲むように立っていた。
「妹がはぐれたの。悪いけど、探すの手伝ってくれないかしら。」
リサさんが、近くの女の子に目をやると3人がうなずく。
「秀平くん、私はこの子たちとミーナを探してきます。あなたは、他の人たちと一階へ逃げて。」
「えっ・・はい・・」
ガシャーン！！
突然ガラスの割れる音。
「おらおらっ、薄汚い悪魔どもがっ！！」
怒声とともに女の絶叫が聞こえた。
階段のほうからだ。
「チッ、やつらもう上がってきやがった。」
僕の後ろで、誰か女の人がぼやいた。
ガタン！
ダン！ダン！！ダン！！
銃声だ。
楽しい衣料品売り場が、一瞬にして地獄へ変わった。
「あらあら、この階は強そうな皆さんでお出迎えかい？」
階段のほうから、女の声が聞こえた。
僕は、その方向に数人の黒い制服姿の女の子を認めた。
僕らとの距離は15ｍほど。
「侵入者め！血祭りにあげてくれるわ！！かかれっ！！」
誰かが掛け声をかけると、付近の女たちが一斉に走り出す。
手に鉄の棒や刃物を持って、制服の少女たちに突っ込んでいく。
20人かそれ以上の頭数だ。
ダン！ダン！！
銃声が響くと、次々と淫魔が倒れていく。
制服の女のところまでたどり着いた5人の淫魔。
それぞれ少女たちに襲いかかった。
1分ほど乱闘が続く。
しかし、勝ったのは侵入者だった。
6人の制服の少女たちは、細身の剣を巧みに使い、淫魔を刺し殺していった。
最後の淫魔がどさりと床に落ちると、6人は横一列になってこっちへ歩いてくる。
「たいした人数だな。」
中央の眼鏡の少女が、嘲笑を浮かべて言う。
6人全員が黒いブレザーに赤いネクタイをしていた。
手にもつのは、柄に赤い宝石のはめ込まれた細身の剣。
腰には拳銃をおさめるホルスターがあった。
僕らと数ｍ距離をおいて、6人は足を止める。
「おまえたちの処刑は、この私が責任を持って行う。安心していい。」
眼鏡の長身の女は腕組し、卑しい笑いを浮かべて僕らを眺める。
「ふざけるな！処刑されるのに安心できるやつがいるか！！」
僕は、反抗心から思わず吼えた。
「なんだおまえは。淫魔の餌のくせに、やけに元気がいいな。」
「サキナ様、まずこの子から処刑しましょう。」
「いい考えだ。ではまずこの男から。ホーリー・フリージング！」
ごおっと、強風が吹いたようにフロアー内に大気の流れが起こる。
と、金縛りにあったように手足が動かなくなった！
くそっ！
「どうかしら？魔法でみなさんを金縛りにしましたわ。わたくしたちはジャスティスナイト。淫魔とその餌食に制裁を加える、正義の戦士。」
「ジャスティスナイト！？貴様ら、ラブリーナイトの仲間か？」
僕はまた吼えた。
「あら、ラブリーナイト様をご存知なのね。わたくしはモナミ。わたくしたちは、ラブリーナイト様をお助けする縁の下の力持ちなのよ。」
「あなたたちのことなど、聞いたことないわ。」
そう言ったのは、リサさんだった。
「なにせ、今回が初陣ですからね。ご存じなくて当然ですわ。」
「淫魔も、その餌食も社会の害毒。早急に抹消しなければ、社会が、この世界が、すべて腐りきってしまう。この階にいる生き物はすべて殺す。人間も淫魔もな。それが我々のやり方だ。安心しろ。皆平等に死を与えてやる。餌も淫魔も差別はせん！！皆平等に価値がない！！」
サキナは、近くの淫魔につばを吐きかけた。
「手始めに、先ほどの男のかた、それから、そちらの淫魔さんを処刑するといたしましょうか。」
モナミは、僕、そしてリサさんを剣で指した。
「よし！その二人をつれてこい！」
サキナは叫んだ。
僕は、二人の少女に囲まれて足払いを受ける。
抵抗できずに、そのまま転んでしりもちをついた。
「こ、この野郎！」
思わず僕は怒鳴る。
「黙れ、ドブネズミ。」
「なんだと！このアマ！」
女は僕のわき腹にけりをいれた。
鈍く重い圧迫感が、僕の呼吸を妨げる。
「ぐはぅっ！？」
「黙れっていってんだろうが。」
こいつら、人間じゃない・・
見かけは女の姿をしてるが、心はけだものだ。
僕は、女の濁った目を見て、それを確信した。
二人の女は僕の両腕をひっぱる。
ずりずりと尻で床を擦って、僕はサキナとモナミの前に引き出される。
となりにはリサさんがいた。
リサさんは、足を折って座っていた。
僕はリサさんと一瞬目を合わせる。
リサさんは、すぐに顔をあげ、サキナをにらみつけた。
「あなたたち、自分と同じ種族を殺すつもりなの！？」
「そうだ。一見、その男は人に見える。しかし、人ではない。哀れな虫だ。おまえら淫魔に種をつける害虫なのだ。だから殺す。おまえら淫魔と一緒にな。」
「・・・・ごめんなさい、秀平くん。」
「くそっ、僕は諦めないぞ！」
そう凄んでみるが、やはり手足は動かない。
「本当に元気がいいな。殺すよりいい使い道があるかもしれないな。」
「それじゃあ、こっちの淫魔さんを先に殺っちゃいましょうか？」
「ふふふ、そうだな。この男は、一番最後に処遇を決めるとするか。」
サキナは腰のホルスターから拳銃を引き抜いた。
「よぉし、今日8人目の淫魔を処刑する。」
その表情には、幸せそうな笑みが浮かんだ。
「やめろ！！」
「残念だが、そういうわけにはいかない。」
「ならば、ここで皆殺しにしてあげるわ。」
僕はその声にはっとした。
それは、僕の耳に心地よく響く、聞きなれた声だった。
サキナとモナミの後方に、僕は、ミーナの姿を見た。
彼女は着替え終えた姿で、マネキンが並んでいる展示場に立っていた。
僕とは5ｍほど離れていた。
サキナたちが一斉に振り返った。
「何者だ！！」
サキナが叫んだ。
「血に飢えた獣に名乗る名前はないわ！」
「何をっ！」
ミーナは胸のペンダントを、服の上から握った。
静かに目を閉じる。
「ラプチャー・ドリーム・テンプテーション！！ドレスアップ！！」
凛とした叫び声が、階の空気をふるわせた。
叫びが終わるやいなや、ミーナの胸から真っ黒な閃光が放射される。
闇が広がり、一瞬で建物を埋め尽くす。
「なっ・・！？」
何も見えなくなった。
まるで月の裏側に放り出されたようだ。
と、ミーナがいた方向が明るくなる。
最初点だった光は、急速に大きくなり、人・・女性の姿になった。
細い光の帯がいくつも彼女にまとわりついていく。
わずか2、3秒のうちにすべての帯が彼女に吸収された。
それに合わせるように、すべてを覆っていた闇が突然消えた。
衣料品のフロアに、本来の明るさが戻った。
僕は、ミーナが立っていた方向を見ていた。
リサさんも、サキナたちも、おそらくほかの淫魔たちも、同じ方向を見ていた。
ミーナの立っていたところ。
そこに、ミーナはいなかった。
その代わり、一人の美しい女戦士が立っていた。
僕には、北欧の神話に登場する戦乙女に見えた。
美の女神を思わせる、金色の長い髪。
気高さと優しさを兼ね備えた顔立ち。
両手で握るのは、死神の鎌。
セーラー服を模した可憐な魔法鎧。
紺色の短いスカートと形のいい脚は、愛と母性を象徴するかのようだ。
彼女は一歩踏み出した。
やっと、凍りついた時間が動き出した。
ほかの全員は、皆、くぎ付けになっていたのだ。
「へん、変身しただと！？」
サキナの声は震えていた。
「あなた、いったい・・何者！！」
モナミも動揺している。
「闇を駆ける愛の狩人！淫魔猟兵！参上！！」
「いっ・・、な、何をしてるか！早く撃て！！真昼間にでてくる闇の戦士など、敵ではないわ！！」
サキナは叫んだ。
我に返ったように、ほかの女たちが銃を抜く。
それぞれ構えて、ばらばらに発砲し始めた。
しかし、何度発砲しても決して命中しない。
キュン、キュンと、淫魔猟兵の手前で跳弾してしまうのだ。
「なぜだ！？何が、どうなってる！？」
「対淫魔弾がまるで効かないわ・・こんなやつがいるなんて聞いてない！」
サキナとモナミは顔を合わせた。
2人の弾はほぼ同時に切れ、慌てて新しいマガジンを装填する。
淫魔猟兵は、余裕の表情でその様子を見ていた。
僕は通話水晶で淫魔猟兵に語りかける。
『6人のうち、真中の2人がリーダー格だ。まずとりまきの4人を倒せ。』
『うん。』
『対人吸着誘導弾を使うんだ。』
まさか、つい先ほど覚えた武器を使うことになるとは。
『分かったわ。』
淫魔猟兵の反応は速かった。
「こちらからいくわよ。ヘル・モスキート！！！」
淫魔猟兵は、鎌の先端を発砲中の女生徒に向ける。
バシュ！！
鎌の先端部から小型のロケット弾が発射された。
熱源誘導式のこの武器なら、射撃に熟練を要さない。
鎌から離れたロケット弾は、火を噴きながら女に突撃する。
「ひ、ひいっ！？」
回避のため、かがもうとするが遅い。
ロケット弾は胸に突き刺さり、正確に心臓を貫徹する。
「ごふ、ごふっ・・いた、げふっ・・」
女の口から、滝のように深紅の液体が溢れだす。
立っているわけでも、かがんでいるわけでもない、中途半端な姿勢。
女は、胸に食い込んだものを抜こうとするが、かなわず、がっくりと倒れた。
直後、ロケット弾に仕込まれた時限信管付高性能火薬が爆発し、上半身のない死体が出来上がった。
呆気にとられる残りの5人。
だが、淫魔猟兵は容赦なく次の一撃を発射する。
バシュッ！！
的となった女は、なんとか回避しようと横に飛びのいた。
彼女が床に着地したと同時に、わき腹にロケット弾が突き刺さった。
肋骨に弾頭がぶつかったため、接触信管が作動してすぐ爆発した。
今度は、肩から上は無事だったが、腹部と股間がない無様な死体となった。
ヘルモスキートは2発撃つと、自動装填に30秒かかる。
『次は魔法を使ってみろ。ストライク・アローを撃つんだ。』
淫魔猟兵は、すっと右手の人差し指で天井を指す。
「ストライク・・・・アローっ！！！」
叫びながら、ジャスティスナイトの女に向けて、指を振り下ろした。
瞬間、音もなく光の矢が人差し指から発射される。
ものすごい速さで飛翔し、敵の女の胴に飛び込む。
命中するや否や、ぐちゃりと肉が潰れる音がした。
女の腹に直径10ｃｍほどの穴ができたのだ。
僕の近くにも、肉片と血が飛んでくる。
女の動きが止まる。
バランスを失って、死体は倒れた。
『続いてソニック・スピードを使え。格闘戦を試すんだ。』
彼女は、右手を握り、地面と垂直にこぶしをつきあげる。
「ソニック・スピード！・・いくぞ！」
その声が聞こえたかと思うと、淫魔猟兵は、モナミのとなりの女の首をはねていた。
この女と淫魔猟兵の距離は、5ｍ以上はあったはずだ。
だが、淫魔猟兵がその距離を移動した事実を見た者はいない。
動態視力の限界以上の速度で動いているからだ。
モナミは、となりの女の首が消えたことに気づく前に、自分の両腕と首を切断された。
胴体から離れた耳は、おそらく、淫魔猟兵の「いくぞ！」という声をまだ聞いていることだろう。
僕にも、淫魔猟兵の動きを見ることができない。
サキナは急にしりもちをついた。
彼女は驚いた表情をしたまま、腹を数十箇所刺される。
サキナをいためつけて気が済んだ淫魔猟兵は、最後にサキナの首をはねた。
サキナは、自分が殺されたことを知らぬまま死んだ。
顔のない死体が、がっくりと仰向けになる。
僕の足元には、3人の生首が転がった。
淫魔猟兵は殺しのために存在する。
こんなシーンに遭遇するのは、覚悟していた。
ソニック・スピードの持続時間は7.4秒。
再度使用するには10分待たねばならない。
淫魔猟兵は動きを完全にとめて、2度呼吸した。
その時点になって、皆はやっと彼女の姿を認識する。
ソニック・スピードが切れた。
サキナの胴のそばで。
彼女は立っていた。
僕を見つめている。
「倒したわ。」
僕は頷いた。
彼女の目には、勝利の喜びはなかった。
その色は、悲しさと虚しさの色だった。
デビルズデンから帰ってきたミーナは、疲れを訴えて、翌日の昼間まで寝込んでいた。
あの戦闘が、彼女の精神に大きなダメージを与えたことは明らかだった。
変身に副作用があったのか。
あるいは、殺戮のイメージが彼女の心をさいなむのか。
それとも、僕の考えすぎで、単に”慣れないこと”をして疲れただけなのか。
もしかしたら、僕の指揮がまずかったのか。
ベストを尽くしたつもりだったが。
僕が机で数学の試験勉強しているそばで、ミーナはパジャマ姿で布団の中をごろごろ。
さすがの淫魔も、体調が悪くては男の誘惑すらままならない。
「ね、ひでっち。」
ミーナは寝返りして僕のほうを見た。
美しい髪の毛が乱れている。
こうして見ると、普通の女の子。
妹みたいだ。
「ミナ、そろそろ腹も減ったんじゃないか。」
「うん、おなか減った。今、ご飯頂戴って言おうと思ったの。」
「やっぱりな。」
「調子は、大丈夫？」
「うん。多分、大丈夫。」
相手は本調子じゃない。
できるだけ負担はかけたくない。
「元気がないときは、淫魔って、どんな食事のとり方するんだ？」
「元気ないときも、元気いいときと同じだよ。」
「その・・僕が一人で出して、君が飲むってのも、ありだと思うんだけど。」
恋人の目の前で自慰行為。
出た分を、彼女に飲ませる。
心温まる行為なのか、ただのヘンタイ行為なのか、微妙なところだ。
「いいよ、そこまでしなくても。」
彼女の表情に、優しい微笑みが浮かんだ。
「負担にならなくていいかなって思ったんだけど。」
「ううん、今日は普通にしたいな。」
普通にって？
夢の中でするってことか？
今は、魔力とかマジックポイントとかマナとか、大丈夫なのか？
行動設定が『まほうつかうな』とかになってるのでは。
「普通にって？」
「うん、普通に、おま○こするのよ。」
「えっ！！！・・・嬉しいな・・」
「まあ♪」
ミーナは、僕の反応に満面の笑みを浮かべた。
「で、でもさぁ、本番って、できないんじゃないの？封印されてるんだろ？」
「本番はできないわよ。でも、お○んこはできるよ♪」
_, ._
（；-@∀@） ！？
「先輩、どうやれば、そんなことできるんですか？」
「あはっ、奥の手を使うに決まってるじゃない。」
自信たっぷりな彼女。
よかった、元気になってきたみたいだ。
ほっとしつつも、僕はそんな色は表に出さないもんね。
「ほぅ？奥の手とは・・。」
「これだっ！」
がばっ☆
彼女は僕の目の前に、右手を突き出した。
どっから出したんだよ、四次元ポケットからかよ。
その手には、妙なちくわのようなものが握られている。
「ち、ちくわっすか、隊長。」
「ちくわ？ナニソレ？これはねー、”○ナホール”っていうのよ！」
・・・・こんな美少女が、こんなエゲツナイもの握るなんて、世も末だな。
いいよ、魑魅魍魎はびこる世界になっちゃって。
どうでもいいや。
199X年、世界は核の炎に包まれちゃってくださいよ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「な、なに黙ってるのよ。」
「なんていうかその。」
「田舎者ねー。あんた”オ○ホール”のひとつも見たことないんでしょ？」
「使ったことあります。」
「え！？そうなんだ？」
「僕はその、そういうのは結構です。」
ミーナの表情は急に険しくなった。
ぐっ、と空気を飲み込む音が聞こえた。
あれ、怒ってる？
「何が結構なのよ。せっかくあたしが、わざわざ、姉さんの部屋から黙って持ってきたっつうのに。」
黙って持ってきたって、しられたらオシオキくらうんじゃ・・
「昔、それ使ってみたことあるんだよ。イイっていう人もいるみたいだけど、僕はちょっと・・」
「昔って、夏に開発されたばかりなのよ。」
開発って・・淫魔の社会って遅れてるんだな。
「人間はだいぶ前からそんなの使ってる。」
人口の何割が利用しているかは別としてな。
「そう・・なんだ？これ、淫魔にすごく人気あるんだぞ？」
彼女は、疑問でいっぱいの表情。
「いったい、どんな使い方すれば、そんなに人気でるんだよ・・」
「うふん、こーするのだぁ♪」
ミーナは、なにやら呪文を唱え始める。
短い呪文を唱え終わると、右手でオナ○ールを持ったまま宙で印を結んだ。
「えいっ！！」
ズガバーン！！！
ドガバキーン！！
ミーナが印を結んだ空間で炎が炸裂した。
ずいぶん派手な使い方するんだな・・
と、ミーナの手から変態ちくわが消えている。
あれ、どこいった、ちくわは。
「へっへーん。これで準備完了！」
「どこいったんだ？さっきのは？」
「まって、いま見せてあげる。」
ミーナはすくっとベットから降りると、僕の目の前で、うぐいす色のパジャマのズボンを脱ぐ。
白く官能的な太もも、飾り気のない真っ白なパンティが目に飛び込んできた。
「さらにぃ、これも脱いじゃう♪」
彼女の細い人差し指と親指が下腹部を伝って、パンティに触った。
ん？彼女の指はぴたりと止まった。
「どうしたのお嬢さん、お脱ぎなさい。」
「さて、ここでクエスチョンです。下着を脱ぐと、大事なところはどうなっているでしょう！？」
こいつ、自分の体で完全に遊んでるな。
とりあえずこっちも、スーパーひ○し君賭けてやるぜ。
「え、どうなってるって、そりゃ、クリト○○が・・花びらがあって・・こう・・」
「ひとつだと思う？」
「え？ひとつって、なんだよ。」
彼女はくすっと笑って、パンティをすっと脱いだ。
秘密のベールは取り払われた。
陰毛の三角地帯はなく、産毛のみの生えた陰部。
薄いピンク色の二枚の花びら。
華奢な花びらだ。
驚くべき点は、本来あるべき位置だけでなく、少し上にも花びらがあることである。
縦に二つ、陰部が並んでいるのである。
_, ._
（；-@∀@） えっ！？
『驚くべき点は』なんて淡々と解説できる状況じゃないぞ！？
お口、おっぱい、お尻、お手×2、おま○こ×2。
単純計算で、7人の男とエッチができる！
あんよ×2もいれれば9人だぜ！
恐るべきセックスマシーンだ。
と、その言葉をなんとか飲み下す。
「二つ、あるね・・」
「ふふ、こういうのふたなりっていうんだっけ？」
「ソレ違う。ふたなりってのは、男のと女のが二種類ついてることだよ。」
「そうなんだ？じゃあ、こういうのはなんていうの？”フタマン”？”フタクリ”？”プリクラ”？」
一番最後のは、明らかに違うぞ。
「こりゃ名称がないな。人類史上初だよ。おまん○ふたつってのは。」
「へー。ちょっと偉そうだね。どうだ人間どもっ。恐れ入ったかっ。」
「ああ、ギネスブックに載るなぁ、こりゃ。」
と、まじまじと彼女の股間を見る。
白い肌の愛らしい少女が、僕に二つの性器を晒している。
「・・・ふふふ・・」
「・・・」
「ほぉら、よく御覧なさい。なかなかいい眺めでしょ？」
僕はその二つの性器に惹き込まれるように、顔を彼女の股間に近づけた。
生暖かい、濃い雌の匂いが僕の鼻を犯す。
香水の心地よい香りと、獣のにおい。
鼻をひくひくさせると、理性が確実に鈍っていくのが分かる。
こんなお姫様みたいな姿をした娘が、こんな濃い匂いを持っているなんて。
「上のほうの穴は、差し込んでいいわよ。下のほうは本物だからだめ。」
「子宮も、二つあるの？」
「うん。しっかり受け止めてあげるよ♪」
彼女はそういって、ベットの上に股を開いて座った。
両手を腰の近くにおく。
思い出したようにパジャマのシャツも脱いで、ピンクのブラだけになった。
潤いのある豊かな乳房が、僕を誘惑する。
完全に臨戦態勢のミーナ。
「生でどぴゅどぴゅ出していいわ♪合体、しよ？」
彼女は、そういって僕の理性に最後の一撃を加えた。
「うぉぉおっ♪」
「はーい♪二人で楽しく、お食事しましょうね〜♪」
僕はさっさとズボンだけ脱ぐと、ベットに乗り込む。
彼女の両足を肩にかけ太ももを満喫できる状態で、ペニスを偽ま○こに押し当てた。
「入れるね。」
「うん♪」
夢の中じゃない。
現実でミーナとセックスできるなんて。
夢の中で経験は積んでるから、入れる位置は間違わない。
僕は強くペニスを押し当てる。
と、少しづつ亀頭が膣に呑まれていく。
呑まれていくに従い、亀頭が、しっとり濡れた弾力のある筒に犯されていく。
夢の中と違って、性的な快楽が高まるのが早い気がする。
入れようとするだけで、膣がぎゅうぎゅうとペニスを締め上げ、びっしりと生えているひだひだが、容赦なく収縮してくるのだ。
ミーナが呼吸するだけで、膣がひくひくし、僕を射精へと誘う。
肉棒を半分まで入れたところで、僕は気持ちよくなって、一気に射精したくなった。
急に奥深くまで突く。
「ああっ、いいっ！」
「あっ。いきなり入れたなー。そんなことすると嫌われるぞ？」
嫌われても好きだっ！！
ぞくぞくと高まる射精願望に僕は抵抗できず、欲望に流される。
ミーナのぬくもりと香りの中で、僕は濃厚な精を放った。
どぴゅるるる！どっくん、どっくん。
「あん★もうイっちゃったのね。」
うぉぉ、気持ちいい！！
出してる最中も出し終わった後も、ひくひく締め上げられる！
出す前よりもペニスは膨れ上がり、パンパンになった！
こりゃ、すごいな。
中毒になって、やめられなくなるかも。
僕は呼吸を荒げながら、腰を往復させた。
「うくっ。」
往復させるたびに、竿も亀頭も、ひだひだに締め上げ、擦られ、しごかれる。
数度、ぎこちなく往復させただけで卒倒しそうなほど快楽が得られる。
ペニスが快楽吸収器になって、僕の感覚をすべて支配したかのようだ。
感覚のチャンネル全てに快楽が入力され、僕は何も考えることができない。
本能に従って、いかにも童貞らしい動きで腰を前後させるだけ。
「ふう、はぁ、あうっ。」
どぴゅうっ、ぴゅ、ぴゅ・・ぴゅっ。
「ああっ、あっ、あぃぅ・・」
数秒、放心状態になって、射精の余韻におぼれる。
我に返ると、ミーナの二つの目が、僕を心配そうに見ていた。
首に感じるぬくもり。
ミーナの指が添えられていた。
「苦しそう。」
「そんなこと、ない。イイよ、とっても。」
「体はよくても、心はつらいのよ。」
「つらくなんか、ない。」
「君の心は、無理やり愛を奪われたの。本当は辛いことなの。」
僕はペニスの出し入れを再開する。
淫らな粘液質の音が、二人を淫らな世界に引き戻す。
「もう二度と、人間の女を愛すことはできないわ。」
「それが、どうしたってんだ。僕は君と結婚するんだ。」
きゅっきゅっと、彼女の膣が締まって、射精へと誘う。
「人間の子供を作らずに、淫魔の子供を作らせられるのよ。」
「君の子供なら、淫魔だろうがなんだって・・」
「子供が増えれば、あなたの世界は淫魔に支配されてしまうのよ。」
「そう・・だろうな・・」
理性の営みが鈍くなってきた。
僕はピストン運動を早めて、さっさと射精してしまうことにする。
ミーナは悲しそうに僕を見つめるばかりで、いっこうに感じる様子はない。
具合はよくても、所詮、偽の性器だってことか。
射精感が膨らんで、はじける。
僕はその瞬間、ひときわ深くペニスで突く。
どぴゅーっ！！
濃い、塊のような精液が直線状に伸びて、彼女の偽の子宮へと入り込んだ。
相手が人間であれば、受精してもおかしくない。
「はぁっ、はぁっ、はあ。」
しだいに疼きが収まっていく。
ペニスを彼女の膣に納めたまま、僕はミーナの頬を吸った。
「ぜぇぜぇ。」
「これから、たくさんの男の子が、こうやって淫魔を抱くようになるわ。」
「・・・・・」
「エッチに夢中になる間に子供ができる。そうなればもう淫魔は男を離さない。」
「夫婦になるわけだな。」
「うん。淫魔の数が増え、人間は減る。男は喜んで淫魔に協力する。そう、あなたのようにね。」
「好きな人には、誰だって協力するよ。」
「うん。本当に愛し合えば、男は命を捨ててでも尽くしてくれる。」
「そうさ。」
「でも、愛し合うことは諸刃の剣でもあるわ。男の苦しみは、あたしたちの苦しみになってしまうから。」
「それは、僕たちだって同じだ。」
「好きになったり、愛したりすることは、苦しいことだわ。あなたは目の前にいて、あたしだけのものになったのに。どうしてこんなに苦しいのかしら。」
「人間は、ずっとその想いに悩まされてきた。」
「あたしも、悩んでる。」
「そういうものさ。」
「・・・・」
「どうした？」
「失うことを考えただけも、苦しいわ。」
「何を？」
「怖いの。いなくなることが。」
「うん？」
「昨日ね、あのまま、あいつらに、君が殺されたらって、考えちゃうの。」
「大丈夫大丈夫。ほら、魔法ですぐ生き返れるだろ？」
「首をはねられたり、傷が深すぎたりすると、魔法はね、効かないんだよ。」
「大丈夫だって、僕は生きてるし、あいつらはミナがやっつけたじゃないか。」
「でも・・」
「どうしたんだよ。ほら、こうやって、僕ら二人で一緒にいるじゃないか。」
「でもね、思うの。君がいなくなったらって。あたし、生きていけないよぉ・・」
彼女の声は、震え始めていた。
ミーナは、僕を強く抱きしめた。
「せっかく仲良しになれたのに、君がいなくなったら、世界が終わっちゃうよ・・」
彼女の目から大粒の涙がこぼれた。
ミーナは泣き出した。
そのときやっと分かった。
彼女の心をさいなむものが。
恐怖だった。
好きな人を失うことへの恐れと絶望。
彼女は戦士、体は淫魔、そしてその心は、脆く傷つきやすい乙女のものだったのだ。
僕は、自分の存在の重さを知った。
彼女には弱点がある。
それは彼女では守ることができない。
守るのは、僕の仕事なんだ。
日曜の午後11時過ぎ。
虹峰綾乃は、入浴をすでに済ませ、寝床に潜り込んだところだった。
ラブリーナイトとしての戦いは、精神的にも肉体的にも消耗を強いられる。
以前のように、勉強や趣味に時間をかけられなくなった。
部屋を暗くして、目を開く。
淫魔はその辺にいる。
殺しても殺して、沸いてくる。
淫魔が怖いとは思わない。
戦えば勝てる相手だから。
ただ、数が多すぎる。
圧倒的だった。
男という生き物は、淫魔に対して脆すぎる。
淫魔に誘惑されれば、すぐ体を許して子供を作ってしまう。
男にしてみれば、女よりも女の姿をした淫魔のほうがいいのだろうか。
もしそうなら、自分が戦い守るこの世界に、どれほどの価値があるというのだろう。
淫魔も厄介だが、堕落した男たちも厄介だった。
淫魔たちの腕になかにいる限り、男たちは子種を流すだけでなく、有形、無形の支援を淫魔たちに提供するのだ。
夫や子供のいる淫魔たちは、守るべきものを守ろうとし、頑強な抵抗を見せる。
また、夫の入れ知恵があるたびに、淫魔たちは情報を共有しより賢くなる。
こちらは”個”として戦っている。
向こうは”個”ではない。
それに、淫魔たちの夫への接し方。
綾乃は、今までに何度も淫魔と夫との間に愛を見たことがある。
きっと、男たちにとっては堪えられない味なのだろう。
淫魔の味。
その味を知る者が増えれば、文明は崩壊する。
だが、人類が死滅するわけではない。
一握りの女と、餌としての男が残される。
人間の女は、人間を産み増やすための家畜。
一方、人間の男はペットとして機能と、精液を求められる。
精液は、淫魔にとっての食料であるのと同時に、生殖に必要な要素である。
”裂け目”からこの世界に現れたのは、女の淫魔だった。
少なくとも、男の淫魔が現れなかっただけ、いいことかもしれない。
綾乃は、男の淫魔などと戦える気がしなかった。
自分の弱さは、いやというほど知っていたから。
女の淫魔たちは美しい。
はっと息を飲むときがある。
何匹も、純粋そうな瞳をした淫魔を見逃したことがあった。
指には銀色の指輪をつけていた。
結婚指輪。
殺せなかった。
それは、自分の弱さからくるものなのか、優しさなのか。
綾乃は悩むことがある。
相談もできず、ただ、不愉快な塊が胸のうちに溜まっていく。
疲れた。
辛い。
綾乃は、何も考えないことにした。
綾乃がまどろみ始めたとき、部屋のドアが開いた。
ぎぃっ。
きしんだ音で、綾乃は飛び起きた。
暗闇の中。
しかし、闇になれた目は、ドアのそばの塊を映し出した。
寝室に入ってきたのは、猫だった。
「にゃーん。」
「ファタリス・・？もう！こっちは眠っていたとこよ！」
「綾。ジャスティスナイトが全員殺された。」
猫は人の言葉を話す。
「えっ！？」
「デビルズデンを攻略しに行って、返り討ちにされた。」
「・・・なぜ？8人がかりで行って、全滅だなんて。」
「一人は二階で死に、もう一人は五階で死に、残りの六人が四階で死んだ。特にこの六人が連絡もせずに死んだ事態は異常だ。予想を超えた”何か”に遭遇した証拠だ。」
「”何か”って、何なの。」
「それは僕にも分からない。僕らがまだ知らない、”何か”だ。」
綾乃は背筋が寒くなった。
「綾乃、危険を伴うが現地を見に行かないか。”何か”の正体が、ひょっとすると分かるかもしれない。」
「分かったわ。」
「日程は後で詰めよう。僕はまた、情報収集をしてくるよ。」
「ご苦労様。頼りにしてるわ。」
「それではゆっくりお休み、ラブリーナイト。ティーナ様の御加護があらんことを。」
「ティーナ様の御加護があらんことを。」
遠い異世界のしきたりで挨拶を返す。
人の言葉を解す黒猫は、また『にゃーん』と鳴いて、部屋を出て行った。
”何か”。
怖くはない。
ただ、ものすごく嫌な予感がした。
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