『悪のヒロインとエッチしましたが何か問題でも?』
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本SS(短編小説)は、2011年から2015年ごろまでwisper様に掲載されていた作品です。
挿絵については、絵を制作された鈴輝桜様に許可を頂いて掲載しています。
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ユウキは目覚めた。
二人でエッチしたベッドの上。
「あ・・・あれ?」
そばに私服姿のミカが添い寝していた。
「からだ、大丈夫だった?」
鼻先が触れ合うほどの距離で、ミカの瞳がユウキを覗き込む。
「うん・・・」
「激しくイカせたら、ユウキさんったら失神しちゃったの。」
「ああ・・そういえば・・・最後はすげーヨカッタような気がする。」
「気絶しなかったら、もっとイカせてあげたんだけど。」
「そんなによくされたら、ミカちゃんの奴隷になっちゃうよ。」
「それはそれで、いいじゃない?」
ミカはユウキに抱きついて唇を奪う。
ユウキの口を割って彼女の舌が入り込んできた。
しばらくの間、彼女とのディープキスを楽しむ。
口を離すときの名残り惜しさといったら。
「あのっ・・・ユウキさん・・・」
ミカは一瞬目をそらした。
「結婚前提で、今日からつきあってもらえますか?」
「うっ!!う、うん、こっちからもお願いします・・・」
「うふふっ、よかった!メルアド、交換しませんか?ユウキさんとメールしたいです。」
「俺も、ミカさんとメールしたい。」
「うん。あ、もう8時すぎてる。ユウキさん、そろそろ帰らなきゃ。」
「帰ったらすぐメール送るからね。」
ユウキはミカを抱きしめて、またディープキスを交わしてから別れた。
午後9時。
駅裏のアパートのとある一室。
ここが本当のミカの部屋である。
1時間前、ユウキを犯したボロアパートは、抵抗勢力の目を欺くためのダミーなのだ。
玄関を抜けて寝室に直行する。
ペルシャ猫が一匹ベッドの中央に陣取っていた。
「おお。帰ったぞ。」
ミカの声に答えるように、猫はニャーンと一声鳴く。
メフィストという名のこの猫は右手で顔を掻きながら、ミカに語りかけた。
「それで、どうだったね。ユカリの彼氏の味は。」
「別に。」
「そうかい。お気に召さなかったか。そりゃ残念だ。」
「そんなこと言ってない。」
「で、ヤツをどうしたのさ。吸い殺したのかい。」
「帰してやった。穏便に済ませたよ。」
「へぇ、そりゃ珍しいな。てっきりミイラにしたのかと思ったけど。」
「殺すよりマシな使い道がある。」
「どう使うつもりだい。」
「知るか!どうだっていいだろ!ほっといてくれ!」
「な、なんだよその言い方。ご主人がそんな言い方すると、召使いは動けないぜ。」
「おまえはアイツと関わらなくていい。私がアイツの相手をする。」
「まあ主人がそういうならやむなしか。一切関わらないようにするよ。」
「いや待て。今のは撤回。アイツの身に何も起こらないように常に監視しろ。」
「は??」
「いいから、そうしろ。命令だ。」
ミカは猫の側に座る。
一息つくまもなく、カバンの中で電子音が鳴った。
テテテテッテッテーン♪
「なんだねお嬢さん。今の音は。勇者が少しだけ強くなった気がする音だね。」
猫から見る主人は、とても嬉しそうにしている。
通学カバンを開けて携帯電話を取り出した。
猫には見えないように、自らの向きを変えて携帯をいじり始める。
「へぇ〜珍しいなあ。君がそんなものを面白そうに使うなんて。」
ミカの目は欲しいおもちゃを手に入れた子供のように輝いている。
「うふふふっ・・・わぁ・・・」
「な、なんだ、何が起こってるんだいったい。」
「うるさい!気にするな!」
「そうですかい・・・」
再び電子音。
チロリーン♪
「よしこれで。」
「これで、どうなるんだ?」
「メールおくっt・・・ではなくて、コホン。情報収集さ。敵の身辺の情報あつめて、戦いを有利にすすめる。」
「その割には、えらく楽しそうだけど。」
不機嫌そうな顔に変わるミカ。
「いいだろう?なんだって。」
カバンから、貸し出し用ケースに入ったDVD二枚を取り出す。
「ほれ、頼まれたのをTATSUYAから借りてきてやったぞ。」
「おおっ!!これはまさかの『SM07小隊』!!」
「第2巻と第3巻でよかったか。」
「うんうん、さすがご主人様!やったぜ!」
「ありがたく見るがいい。」
ミカがプレイヤーにDVDを挿入する。
ロボットアニメが始まった。
「主殿。第2巻は冒頭から見せ場だぞ。ボリス・パッカドノフ少佐の乗るドフカスタムが、ヒートムチでワレン・ジョシュアを打ちまくりなんだ!これぞまさにSMの真骨頂!」
「そうか。よかったな。」
ミカはあぐらをかいてベッドに座る。
数分ほどアニメをみていたが、退屈なのかベッドに横になった。
メフィストだけが、液晶テレビの画面を齧りつくように見ていた。
アニメが始まって5分ほどしてミカの携帯が鳴る。
彼女は飛び起きて携帯を掴んだ。
「はい、ミカです。・・・今ね、うちにいたよ。うん、うんうん・・・」
アニメでは、ボリスが仲間を守るために出撃しようとする、感動シーンの真っ最中。
それが見事にミカの話し声で邪魔される。
「えへへ、白いの溜まってきちゃったの?あんなにヌいてあげたじゃない。え〜・・・オナニー?あたしのどこでオナるの?」
「むぅ、ご主人・・・物語が台なしなんだが・・・」
控えめに抗議するメフィスト。
その声は主人には届かない。
「脚?脚がいいんだぁ。そういえば、ハメてるときも靴下触ってたよね?うふふ、脚なんだぁ。」
「いや、だからその・・・」
ミカは気づいて、ギロリと猫を睨んだ。
男を誘うネコナデ声とキツイ視線のギャップが怖い。
「じゃあ、明日は脚でいっぱいシゴいてあげるね。うん、それまでたっぷり精を貯めてて。」
ミカは何度か相槌を打った後、別れの挨拶をして電話を切った。
「・・・ふふふっ。いいことを聞いたぞ。ヤツの性的嗜好は概ね把握した。」
「ヤツって?」
「バカ!決まってるだろ。ユカリの男のことだ。」
「はぁ。彼のエロのツボが分かると、何か得するのかい。」
「うん。ユカリの強さの秘密が分かるかもしれない。」
「いつもみたいに魔法でガリガリって洗脳して、さっさと白状させたらいいのでは?」
「バ、バカ者ッ!そんなことするか!」
「ええっ!?どうして?しないんだい?」
「うるさい、ボケッ!」
『SM07小隊』第3巻のDVDが宙を舞い、ペルシャ猫の背中にヒットした。
猫の背中に鈍く重い痛みが広がる。
「ぐはっ・・・めふすとは58ポイントのダメージ・・・国際使い魔協会東日本支部は、虐待に強く抗議します・・・」
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